日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P077
会議情報

発表要旨
仙台平野中北部における洪水土砂流入期に関する研究
*松本 秀明佐々木 弘太伊藤 晶文吉田 航熊谷 真樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.はじめに 仙台平野は南北50㎞,東西10~15㎞前後の沖積低地で,北から七北田川,名取川,阿武隈川が流入している。平野の中部を流れる名取川は支流の広瀬川とともに,平野の陸側部分に半径約5㎞の合流扇状地を形成している。扇状地上には多くの「自然堤防-旧河道」地形が分布し,その一部は扇状地から低地側に長く張り出している。平野の北部を流れる七北田川は土砂の供給量が少なく後氷期海進により形成された内湾が,少なくとも2400年前まで,第Ⅰ浜堤列の背後に潟湖として広がっていた。 本研究では名取川,七北田川が流下する地域について,地表に残された「自然堤防-旧河道」地形や地表面下にみいだされる洪水堆積物の堆積状況の調査と放射性炭素年代測定により,多量の土砂が平野に供給された時期をそれぞれ特定した。その結果,過去約4千年間において多量の洪水土砂流入期が2~3期存在したことが求められた。2.名取川流域の大規模自然堤防地形の形成時期 名取川流域については,扇状地から低地側に張り出すように発達した自然堤防群について,その分布と層厚を重機による掘削や簡易ボーリング調査により明らかにした。その結果少なくとも2500~2400 yrBPと1600~1500 yrBPに多量の土砂を伴う大規模な洪水が存在したことが確認された。3.七北田川下流の潟湖の埋積期と土砂の流入 七北田川流域については,潟湖の埋積に関わる洪水土砂の堆積時期を求めることにより,大規模洪水イベントの発生時期について検討した。その結果,潟湖は約3800 yrBP以前から3200 yrBPまではマガキが棲息する内湾的環境であったが,3200~2400 yrBPには次第に水深の浅い干潟的環境へ変化し,その後2400 yrBP,1900 yrBP,1500 yrBP,そして900 yrBP頃に発生した大規模な洪水により多量の土砂が供給され,潟湖の埋積が進行したと考えられた。4.まとめ これまで,発表者らによる仙台平野内外の調査で,2500~2400 yrBPおよび1500~1400 yrBPに大規模な洪水,あるいは洪水頻発期の存在が確認されつつある。今後さらに具体的な事例の蓄積を継続してゆきたい。 現在,東北地方太平洋岸では2011年3月の巨大津波に備えた防潮堤の建設や居住地の高台移転計画が進行しつつあるが,数百年~千年規模の大災害という視点において,背後から襲いかかる大規模洪水や土石流による災害も十分に想定内に捉えておくことが必要である。とくに造成された盛土地盤は地震動に耐えることが必要である。また,沿岸の防潮堤機能を想定した盛土や高い防潮堤は大規模洪水時の低地の排水機能を併せ持つ必要がある。

著者関連情報
© 2013 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top