抄録
【被災の状況】宮古市では、東日本大震災により死者・行方不明者514人(うち60歳以上345人)、住家倒壊(全壊・半壊)数等4,005棟(沿岸世帯数の約20%)、浸水面積861.81ha(居住地域)等の被災を受けた。復旧に関しては、被災規模が大きかった割には早い段階(H23年中)でほぼ落ち着きを取り戻しているが、震災から2年を経過した現在でも、浸水地区は更地状態である。これらの影響等もあり、平成24年11月1日現在、宮古市の人口は1,300人余り減少し、58,836人となっている。また仮設住宅への入居は,1,677世帯/62団地となっている(平成24年12月31日現在/社協調べ)。【支援の役割】社会福祉協議会は、「住民の生活上の困りごとを住民等とともに解決」することが本来の役割とされており、3.11の震災は、社協として最優先に取り組まなければならない課題となった。震災直後の被災状況の把握と避難所等での被災者支援、災害ボランティアセンターを設置しての被災地ボランティアニーズ把握とボランティアの受付・派遣、当面の資金を補うための生活福祉資金等の貸付を行い、仮設住宅への入居が始まってからは、仮設住宅での被災者の生活と住民活動の支援を行いながら、当面の生活の安定と、精神的負担等によるリスク等が回避されるよう、生活支援相談員等による巡回訪問やボランティア・支援者らによる活動を仮設住宅集会所・談話室等に振り向け,被災住民等の交流が自立的に行えるよう住民活動を主体とした支援を行ってきた。【地域支援者】震災直後の支援活動は、地域住民の多くが混乱した状況に陥った中、避難所等で活動する地域支援者(民生委員や町内自治会長)等から得られた情報を基に行うことが多く、地域の事情に詳しい方が可能な限り情報把握を行っていたことで、関係機関も住民支援等を行うことができた。中には、自らの被災により十分な動きを取れない地域支援者等もあったが、いずれにしても、それぞれの地域から情報提供いただくことが大切であり、平時における連携がとても重要であることに気づくことができた。【被災住民活動】社協では、被災世帯が抱える生活課題等に対応するため、地域福祉を担当する部署に「災害ボランティアセンター(のちの「生活復興支援センター」)」を設置し、被災者への相談・支援にあたる「生活支援相談員」20名(うち地域福祉課職員兼務5名」)、仮設住宅集会所・談話室を拠点に被災者の生活上の支援にあたる「生活支援員」24名をそれぞれ配置し、戸別の支援活動や外部支援受入調整等を行う体制を整えた。しかし、支援を与えるだけでは被災住民の生活を充実させることは困難なため、自治会等の形成で住民活動が活性化するよう既存自治会等の協力を頂きながら働きかけた結果、62仮設住宅団地のうち18団地が自治会を立上げ、14団地が既存自治会に参加する形で主体的な取り組みを引き出し、さらに、同じ団地内に暮らす住民が生活課題等を共有しながら連携機能を損なわないよう住民交流を促している。【支援活動を行う中で】被災地の状況が日々変化する中で、時間の経過とともに被災者に対する支援の内容等も変えていかなければならない。震災直後の物的支援中心のままでは、生活の復興に向けた自立を損なうばかりでなく、被災者が抱える生活課題が埋もれてしまう恐れがあり、支援者等による対応だけでは、住民自らの課題解決能力も阻害してしまうことになりかねない。【生活復興に向けて】これらのことを踏まえ、生活復興に向けた支援は、変化を見抜きながらの地道な活動に加え、早めの対応・対策を立てながら、より具体的な生活復興支援活動に取り組むための備えを行うことになる。ただし、現状、復興住宅等の建設に関して現実的な動きが見えてこないことから、実生活へのフォローを続けながらの対応となりそうである。付記 本発表は、公益財団法人 トヨタ財団 「2012年度研究助成プログラム東日本大震災対応『特定課題』政策提言助成」の対象プロジェクト(D12-EA-1017, 代表岩船昌起)の助成で実施した。