日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 401
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発表要旨
ホームレス自立支援センターの立地パターンと就労自立
*キーナー ヨハネス
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抄録

研究背景と課題1990年代に、我が国で路上生活のホームレス問題が顕在化した。その政策的理念として、90年代後半には野宿生活者に向けて、地域での自立した生活を目的とした「自立支援」の概念が導入された。2002年の「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」の施行によって、この流れは強化され、ホームレスの自立を支援する為に居住の場の確保が必要となるので、自立支援を行う施設が開設されるようになった。その自立支援の中心になった施設がホームレス自立支援センターであった。一般的にホームレス支援に関連する施設は、地域社会に反対されがちであり、立地はスムースにはいかない。その立地は、そもそもホームレスの人々の就労機会の多いところに近接する立地が望まれるが、運営することになった組織が有する施設敷地内や、新規の場合には、もともと立地する迷惑施設のある縁辺地区になる場合が多い。研究目的と方法本研究の目的は、自立支援センターの立地が支援の目的と支援の効果にどういう影響を与えるか明らかにすることである。研究対象は全国の25ヶ所の自立支援センターとなっている。それらの立地の特徴を把握しながら、自立支援センター別の支援目的と支援効果の分析を通じて、立地の影響を明らかにする。分析のために自立支援センターが作成した退所者に関するデータを利用しており、立地の特徴は地図と文献及びフィルドワークをもとに把握した。概要ホームレス自立支援センターの中で利便性の高い地域に位置していると、就労自立率という傾向は大阪市と名古屋市で見られる。例えば、大阪市1は市街地の真ん中に位置し、就労自立率は40%と高い。同じ傾向は大阪市の中心に位置している大阪市2でもある。それに対して最寄り駅から遠く位置している大阪市3の就労自立率が33%と低い。そして、都心から離れている埋立地の舞洲に位置している大阪4の就労自立率は6%と最も低い。しかし、こういう傾向はすべてホームレス自立支援センターに当てはまるわけではない。東京の場合は明瞭な関係を見出しにくい。利便性が高い都心に位置している東京都2の就労退所率は53%であることに対して、河川敷に近くて不便な東京都4の就労自立率は30%と低いのは大阪市と同様である。しかし、最寄り駅から離れた東京都5の就労自立率も52%と高くて、利便性の高い東京都2とほとんど同様である。結果としてホームレス自立支援センターの立地は、原則的には就労自立率に影響を及ぼすと考えられる。しかしそれは立地の至便さの高低が生み出す要因に特定できるだけではなく、ホームレス自立支援センターの支援方針にも関連している。

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