日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 503
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発表要旨
ボリビアアンデス,チャルキニ峰西氷河前面における土壌発達過程
*山縣 耕太郎長谷川 裕彦高橋 伸幸
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抄録

本研究では,ボリビアアンデス,チャルキニ峰において,完新世以降の温暖化に伴い縮小した氷河前面における土壌の生成過程を検討する.今回は,その準備段階として,氷河前面の地形区分と各地形単位上に見られる土壌の特徴把握を行った結果を報告する.チャルキニ峰(5392m)は,東コルディレラ山系レアル山脈の南部に位置し,山頂周辺には5つの小規模な氷河とカール地形が確認される.このうち,西カールを調査対象地とした.チャルキニ峰西氷河の前面において,地形単位ごとにピットを作成して,土壌断面の観察を行った.氷河前面の地形は,完新世初頭以前のモレーン(H1,H2)と小氷期以降のモレーン(M1~M13)およびモレーン間の平坦面に区分される.モレーン間の平坦面は,地表面の形態と構成物から,さらに氷河底ティル堆積面,氷河上ティル堆積面,氷河底流路,氷河前面アウトウォッシュに区分された.各地形単位上に発達する土壌について,M6とM8モレーンおよびその間の平坦面を中心に比較した.その結果,表層の構成物質や,氷河から解放された後の物質移動の影響を受けた土壌断面の違いが認められた.モレーンリッジは,細粒のマトリックスを含んだ粗粒な岩礫で構成されている.M6上でA層は1㎝程度と薄く,場所によってはA層を欠くところがある.植生のない地表面では,霜柱が形成されている痕跡が認められる.実際に調査期間中の地温観測でも,明け方,一時的に地温が0度以下になっていることが確かめられている.霜柱の形成に伴って,傾斜のあるリッジ上では,表層物質の移動,侵食が生じているものと予測される.一方で,モレーン間の平坦面は,相対的に土壌の発達程度は進んでいる.これは,霜柱や周氷河作用による物質移動の影響が小さいためであろう.特に氷河前面アウトウォッシュで,現在も水流がある部分に隣接した堆積部分では,15㎝程の厚さのA層が発達した湿性土壌が観察された.

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