日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 504
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発表要旨
ボリビアアンデスにおける植物分布に関わる氷河縮小と高度
*水野 一晴
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抄録
1.チャルキニ峰の氷河縮小と植生遷移
ボリビアアンデス、コルディレラ・リアルのチャルキニ峰(5740m)の西カールにおいて分布するモレーンとその植生分布を調査した。チャルキニ峰西カールは、Rabatel (2008)により、モレーンが1-10に区分されている。それらのモレーンのうち、Rabetel(2008)で年代が示されているモレーン1:1663±23、モレーン6:1791±18、モレーン9:1873±25と、Rabatel(2008)に出てこない、さらに新しいモレーン11、モレーン13の計5カ所に10mx10mのプロットを設け、そのなかの2mx2mの方形区ごとに、植生分布と地表面構成物質の礫経分布を調査した。また、氷河末端付近の植生分布も調査した。モレーン11の年代は、Rabatel(2008)のモレーン10の年代、1907±19より10-20年くらい新しいもの、モレーン13は、1980年代くらいと推定される。モレーンの年代が新しくなるにつれて、分布する堆積物の礫経も大きく、植物の出現種数や植被率が低下していった。現在の氷河末端は高度4990mであり、氷河末端付近における出現種はPerezia sp.(Perezia multiflora ?)、Deyeuxia chrysantha、Senecio rufescensの3種のみで、それらが大きな岩塊わきに点在し、植被率はきわめて低い。
2.チャカルタヤ山の地質と植物分布
 ボリビアアンデス、コルディレラ・リアルのチャカルタヤ山(5199m)の氷河は2009年に消滅した。水野(1999)やMizuno(2002)により、1993年の調査時の植物分布の上限の高さは、堆積岩の珪質頁岩の地域で4950m、火成岩の石英斑岩地域で5050m、変成岩のホルンフェルスの地域はその中間であった。また、高度4950mでの植被率は、珪質頁岩地域が0%、ホルンフェルス地域が10%、石英班岩地域が20%であった。これは、珪質頁岩の平均節理密度(1mの針金の輪を岩盤にあてたときの節理と交差する回数を20回測ったときの平均値)が13.3、ホルンフェルスが5.0-8.3、石英班岩が3.0-3.3であり、その節理密度にしたがって、生産される堆積物の大きさが異なった。細かい堆積物の多い珪質頁岩地域は地表の移動量が大きいため、植被率が小さく、植物分布の上限が低いが、堆積物の大きい石英班岩地域では地表の移動量が小さいため、植被率や生育上限高度が高くなっていた。どの地域も上限の分布植物はイネ科のDeyeuxia nitidulaであった。 この3つの地質地域で2012年においても同様な調査を行った。チャカルタヤ山の石英班岩地域の植物分布の上限は5058mで生育植物はキク科キオン属のSenecio rufescensであった。ケニア山においても、氷河消失後最初に生育できるのはセネシオ(Senecio keniopytum)であって、同種はケニア山の植物分布の最上限種でもあった。2012年のホルンフェルス地域の植物分布の上限は5033mで、珪質頁岩地域の植物分布の上限は5022mであり、その上限の植物種はともにSenecio rufescensであった。2012年の植物分布の上限高度が1993年に比べ、石英班岩地域で8m、珪質頁岩地域で72m上昇していた。
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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