本報告は現地で得た景観観察から得られた情報を中心にして，聞き取り調査や統計資料等のデータを加えることにより，典型的な内陸地域に位置する甘粛省で現在起こっている土地利用変化の一端を明らかにし，そのメカニズムや要因・背景を考察することを目的とする。 甘粛省は厳しい自然条件と内陸というその置かれた位置といった制約条件により，沿海地域の諸都市・諸省と比べると経済発展の進展が遅れてきた。また，省内の水資源総量に対する供給水総量は，年による変動はあるが，5～6割に達しており，水資源という点では非常に厳しい状況にある。しかし，西部大開発政策などを背景として，都市化や工業化による都市的土地利用の拡大，さらに新エネルギーによる未利用地の新たな経済活動での利用が進んでいる。農地利用の面でも，従来の主要作物から多様化が進んでいる。黄土高原における果樹の植林などとあわせて，より生産性の高い土地利用が拡大している。このように省内各地の地域的条件を活かした新たな土地利用のあり方が模索されている。
