本発表では、山形県真室川町と群馬県沼田市(旧利根郡利根村)における森林鉄道の保存機関車(かつて林野庁で使用)の活用についての相違を、地域資源としての位置づけに着目しながら明らかにするものである。
真室川町の場合、当初ディーゼル機関車は歴史民俗資料館の展示物であったが、現在は観光資源としての価値が高まった。これは機関車の所有権が林野庁から町へ移ったこと、機関車の動態保存が可能になったことによるが、特に機関車の活用について、譲渡の申し入れの時点から関わってきた前町長のイニシアチブによるところが大きいといえる。
沼田市の場合、一時期商工会が蒸気機関車の観光資源化のプランを探ったが実現しなかった。これは機関車が林野庁の研修資料であり、その所有権が一貫して林野庁にあったことによる。しかし、蒸気機関車をはじめとする機関車の産業遺産としての価値が高まった点で、修復作業の中心となったボランティアグループの役割は大きいといえる。