日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 712
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発表要旨
高校生の「日本の南極観測事業」への意識と南極を通しての 環境教育の可能性
南極を通してのESD
*久保田 充
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抄録
@font-face { font-family: "MS 明朝"; }@font-face { font-family: "MS ゴシック"; }@font-face { font-family: "Century"; }@font-face { font-family: "Cambria Math"; }@font-face { font-family: "@MS ゴシック"; }@font-face { font-family: "@MS 明朝"; }p.MsoNormal, li.MsoNormal, div.MsoNormal { margin: 0mm 0mm 0.0001pt; text-align: justify; font-size: 12pt; font-family: Century; }.MsoChpDefault { font-size: 10pt; font-family: Century; }div.WordSection1 { page: WordSection1; } 1.はじめに  2002年12月の国連総会において、2005年から2014年までの10年間を「国連持続可能な開発のための教育の10年」とすることが決議された。「持続可能な開発」とは、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代の世代のニーズを満たすような社会づくりのことを意味する(ユネスコ,2005)。  そして、平成20年3月告示の中学校学習指導要領、平成21年3月告示の高等学校学習指導要領において社会科系教科で、「持続可能な社会の実現を目指す」(以下、持続可能な開発のための教育を「ESD」と略す)という視点が明示された。つまり、ESDの視点を取り入れた学習指導がよりいっそう求められるようになったといってよい。本報告では、2012年12月、2013年1月に高校「現代社会」の授業内に実施したアンケート結果を示し、南極を取り上げたESDの可能性について考察する。 2.高校生の「日本の南極観測事業」に対する意識  昨年度、高校1年生の「現代社会」の授業で、日本の「南極観測事業」についてのアンケートをおこなった。「財政難で十分な予算が確保できないため、南極観測船『しらせ』に搭載する大型ヘリコプターの運用が滞っている」という新聞記事を配り、「現在の日本の国家財政を考えた上で、もしあなたが首相だったら、南極観測事業の予算を増額するか、しないか」を理由も含めて回答してもらった。回答者数145名、予算を増額する58名(40%)、増額しない87名(60%)であった。  増額しないと回答した生徒の理由をみると、「国家財政が厳しいから」、「東日本大震災への復興予算が必要だから」、といった必要性はわかるが止むなくという意見もあったが、一方で、「日本の南極観測事業が何をしているかわからない」「今まで日本が南極観測事業をしていることも知らなかった」という意見もみられた。 3.「出前授業」  つぎの授業で、元南極観測隊員の方に「出前授業」をおこなっていただいた。内容は自身の両極地域における観測経験についての話と地球温暖化についてである。授業後のアンケートで、1)南極に行ってみたいか、2)印象に残った内容、3)感想、を回答してもらった。回答者151名、南極に行ってみたい66名(約44%)、行きたくない85名(約56%)であった。感想をみると、地球温暖化について興味や関心が深まった、意識が変わったという意見が多かった。また、実際に体験した方の話を聞き、南極や北極の自然や環境に興味をもったという意見もあった。 4.ESDと南極  南極大陸は、地球上で唯一の「国境もなければ軍事基地もない大陸」であり、「人類の理想を実現した地域」である。それを可能にしたのが南極条約であり、80年代の南極における資源開発の波にも待ったをかけた。90年代には環境保護に関する南極条約議定書も発効し、より明確に環境保全に対する努力が求められるようになった。このような特質を有する南極は、学習指導要領で求められているESDの視点にたった学習指導の題材として最適な地域の一つであるといえよう。とくに、高等学校「地理B」の「(3)現代世界の地誌的考察」で南極の探検史、南極条約、南極からみた地球環境問題などを取り扱うことは、ESDの視点からも大変意義が大きいと考える。これは、「地理」という科目だからこそできる切り口ではないだろうか。その中で、近年研究機関でも活発になっているアウトリーチ活動の1つである「出前授業」を活用することは、生徒たちの興味・関心を高めるだけでなく、日本の南極観測事業を社会的に認知してもらう上でも大切であると考える。
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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