日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 814
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発表要旨
東京圏における世帯内単身者とブルーカラー従事者の空間パターンの変容
*青井 新之介中澤 高志
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抄録
はじめに 一時、メディアでも取り上げられたパラサイト・シングル(世帯内単身者)は、その社会・経済的地位の低さに目が向けられるにようになり、一種の社会問題と認識されるまでになった。しかしそれは、主にジェンダーや家族社会学の関心分野に留まっている。世帯内単身者の分布を検討した研究もみられるが、家族形態を社会・経済的地位との関連によって経年的に分析する試みは今もって十分でない状況である。家族形態が社会階層によって決定されるようになるならば、それは都市空間にどのように現れてくるだろうか。本報告では、世帯内単身者に焦点をあてて、それを分析する。   研究方法 本報告で用いるのは1980~2010年の国勢調査報告である。対象は男性のみとするが、その理由は、男女で世帯内単身者の形成要因が異なるうえ、今もって家族の家計を男性が主に担うことが期待されるため、家族形態に必要なコストに見合った職業につく、という仮定が成り立つためである。報告者らは各年時について20歳から59歳までの5歳階級ごとに分析を行ったが、ライフコースの変容がもっとも大きくなると考えられる30~34歳を取り上げる。年齢を限定するため、研究に用いる統計は市区町村を単位とし、郊外開発に関する先行研究(川口2007)を参考に、都心(東京駅)から60㎞圏内に自治体庁舎が存在する自治体を対象とする。 世帯内単身者率とブルーカラー率は、いずれも都心から離れるにしたがって上昇する。より詳細に空間パターンを分析するため、都心からの方位角を利用した展開法(Krakover and Casetti 1988)を用いて、世帯内単身者率とブルーカラー率の方位角による傾きがセクターによって異なることを示す。さらに、その残差の空間的偏りを検討する。   結果と考察 市町村を単位としてみると、世帯内単身者率とブルーカラー率との相関は強まる傾向にある。2010年においては、その分布においても展開法を用いたモデルの説明力が向上している。東京圏全体としてはセクター性を伴いつつも、同心円構造を強めており、社会・経済的地位の低い層が世帯内単身者として郊外の特定セクターに残存する傾向が指摘できる。このことは東京圏内部で社会階層による移動傾向の差異を示唆している。   文献 Krakover, S. and Casetti, E. 1988. Directionally biased metropolitan growth: A model and a case study. Economic Geography 64: 17-28. 川口太郎2007.社会経済的人口属性からみた大都市圏空間構造の変遷.明治大学人文科学研究所紀要60: 63-76.
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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