日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0102
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発表要旨
英国における国土のエリアマネジメントの手法-国内展開の可能性-
*Ye 京禄
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抄録
「私人による公物管理」の取り組みの一環として「エリアマネジメント」という概念が浸透しつつある。国内のまちづくり活動の成功事例が蓄積されることで認識が進み、「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」と定義され、一定のエリアを対象にさまざまな活動が展開される仕組みとされている。ただ、この概念は、地域と言っても既成市街地や新規開発地の住宅地、業務・商業地での取り組みが主体であり国土の大部分を占める農山魚村や自然地の管理概念には及んでいない。少子高齢化、経済成長の鈍化などで公の力だけでは国土資源を管理できず、「新たな公」なる主体が求められている現状を考えると、市街地のみならず国土全域に対して「エリアマネジメント」なる活動が必要になってくる。 英国ではランドスケープ特性エリアと称して、同質な自然的・文化的特性を持った「エリア」を全国で159区分し、 そのエリアの特性を損なわないマネジメントを住民・地権者・行政・グラウンドワーカーなどの「パートナーシップ」によって行われている。この活動は様々な資金で支援されており、日本における国土のエリアマネジメントの良い事例になると考えられる。本シンポジウムでは、「エリアマネジメント」の成立条件である、「一定のエリア」をどう規定するか、管理主体となる「新たな公」をどう形成するか、「マネジメント方向」はどう定めるのか、どのように「支援していくか」などの議論につながるものである。具体的には、イギリスのNational>County> Local Character Areaの特定手法について、特にイギリス北東部Durham Countyを事例に紹介する。「新たな公」では、個別エリアを対象に地域活性化活動を行うLimestone Landscape Partnerships について、「マネジメントの方向」については、エリアの特性を損なわない保全管理活動の指針となるLandscape Profile、Action Planについて紹介する。「支援策」に至っては、英国の国営宝くじ基金の一つであるLP(Landscape Partnerships)について紹介する。これらを参照し、英国のような国土管理手法の国内への展開可能性について議論していきたい。
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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