抄録
造成地の土壌は盛り土や切り土,踏圧による圧密や人工資材の混入といった様々な人為的な影響により,農耕地や森林土壌とは異なる性質を示すと考えられる.そのような環境下では,地温や土壌水分の変動にも影響を及ぼし,熱伝導率などの土壌の熱的特性も独自の特徴を示すことが推測される. そこで,本研究では2013年7月から10月上旬にかけて,首都大学東京南大沢キャンパス内の芝地造成地において50cm深までの地温・土壌水分の観測を土壌の構造が異なる2地点を対象として行い,その結果から熱伝導率を計算することを試みた. 観測を行った結果,地温は明確な日変化を30cm深前後まで示し,土壌硬度が高く緻密な構造を示し,コンクリート片の混入が確認されたSt.1では熱伝導率が高くなり,深部まで地温が高くなる様子が観測され,強い圧密を受けた緻密な土壌は熱伝導率が高く,深部まで地温が高くなると推測された.一方,土壌改良資材が大量に混入していたSt.2では観測期間を通じ土壌水分量が比較的少なくなっており,土壌改良剤が土壌の排水性・保水性に影響を与え,熱伝導率などの熱特性にも影響を及ぼしている可能性が示唆された.