日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P007
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発表要旨
GPS付き魚群探知機を用いた三日月湖の湖盆図作成
*堀 和明清水 啓亮谷口 知慎野木 一輝
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抄録

石狩川下流域には蛇行流路の自然短絡によって形成された三日月湖(河跡湖)が多数みられる.これらの面積は把握されているものの,湖盆形態について十分な調査がなされているとはいえない.また,細粒な土砂による埋積や人工改変が進んだ場合,近い将来に消失する可能性があるため,現在の湖盆形態を把握しておく必要がある.三日月湖の規模や水深は小さいため,本研究では安価で容易な方法を用いた湖盆図作成を試みた.具体的には,ゴムボートにエレキモータを取り付けて湖沼内を走行し,GPS機能搭載の魚群探知機で水深測定をおこなった.また,底質を把握するための採泥調査もおこなった.
現地調査は美唄市および樺戸郡浦臼町に分布する伊藤沼,菱沼,月沼,トイ沼,ピラ沼において2010年8月~9月にかけて実施した.これらの湖沼の面積は0.018~0.145 km2である(草ほか,2001).エレキモータとGPS付魚群探知機(Lowrance HDS-5)を取り付けたゴムボートで湖沼内を走行しながら測深をおこなった.水深の小さい場所では水生植物(とくにヒシ)が繁茂していたり,モータの先端部が湖底に触れたりするため,ボートで進入することが困難であり,そこでの測深はおこなえなかった.水面の標高は測量および湖沼に設置されている各種施設の高さから求めた.また,湖岸線の緯度経度は,Google Earthの画像(2012年6月撮影)をトレースして決定した.この湖岸線を水深0 mとみなした.測深データおよび湖岸線のデータについて解析ソフト(Surfer)を用いて補間をおこない,等深線を描いた.補間法にはKrigingを用いた.  湖底表面の堆積物はエクマン・バージ採泥器を用いて採取した.また,各湖沼において水深の大きな1地点において,佐竹式コアーサンプラーにより長さ30~40 cm程度の柱状試料を採取した.試料については過酸化水素水を用いて有機物を分解させた後,レーザー回折式粒度分布測定装置により粒度を測定した.柱状試料については1 cm間隔で分析をおこなった.
各三日月湖では,面積の非常に小さい月沼を除き,屈曲部の外側(流路だったときの攻撃斜面側)で水深が大きくなっていることから,ほとんどの三日月湖は流路だった時代の形態をまだ保持していると考えられる(図1).また,伊藤沼,菱沼,トイ沼においては,等深線の間隔が湖沼の下流側で広くなっている.水深については水面の高さが人為的に制御されているため自然状態ではないものの,最深部の水深は伊藤沼で3.3 m,菱沼で7.5 m,月沼で2.2 m,トイ沼で2.5 m,ピラ沼で4.0 mであった.  各湖沼の湖底はほぼすべて細粒シルト~粘土からなっている.ただし,伊藤沼では水深の小さい,滑走斜面側の一部の地点で砂がみられた.各湖沼の柱状試料も最下部(湖底下30~40 cm程度)まで泥であった.したがって,近年は細粒物質の堆積が進んでいると推定される.時間を置いてから再び測深や底質調査をおこない,今回の調査と比較検討することで,湖盆形態や底質の変化を把握できるだろう.

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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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