日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0204
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日本ジオパークの審査制度と地理学視点
*目代 邦康
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抄録

日本のジオパークは,世界ジオパークとなっている6箇所を含め,2014年1月現在33箇所である.新たにジオパークになった地域では,地元の新聞などに,まれではあるが「ジオパークに登録」といった記事が出ることがある.この表現は誤りである.ジオパーク認定と書かれることもあるが,これは誤りではないが正確でもない.正しくは世界(あるいは日本)ジオパークネットワーク加盟認定ということである.これは,それぞれのジオパークが主体性を持った組織体であり,ジオパークになるということは,その組織体の連合(ネットワーク)に加盟し,ジオパークであるということを名乗ることができるということである.個別のジオパークの活動が重要であり,その活動そのものがジオパークの実体である.たとえば,国際連合に新たな国が加わったとき,国連に登録,あるいは国連に認定とは言わず,国連に加盟ということと同じである.  特定の地域が,地域の自然資源を保全し,それを地域振興に役立てようとする活動は,ジオパークの枠組みを用いずとも様々な方法がある.様々な方法がある中で,地域に存在する資源を評価し,地域に適した方法論を考えた上で,ジオパークが適しているとその地域が判断すれば,その地域は,ジオパークに向けての活動を開始したことになる. ジオパークになる利点は,それが各地のジオパークの連携を大事にするネットワークの機能があることである.一方,ネットワーク側は,ジオパークとしてブランドの価値を維持していくため,新たにジオパークになろうとしている地域に対して,そこがジオパークの目的を実現するための,資源を有しているか,また準備ができているか,客観的な評価をすることとなる.その評価の対象となるのは,地(質)遺産(geoheritage)を評価し,その保全が図られているか,あるいは持続可能な発展(sustainable development)を実現するための組織,計画は整っているかなどである.ジオパークとしての評価すなわち審査を経ることにより,ジオパークになった地域は,ジオパークという価値づけ(valuing)がなされ,その地域においては保全に対しての意識を高まり,外部に対しては他地域との差異が生まれ,ジオツーリズムの対象として認識されるようになる.研究者がツーリストといった外部から評価をうけ,それがジオツーリズムなどの地域振興につながることにより,地域の自然環境や文化の保全に対してのインセンティブが働くようになる.審査制度による価値付けは,このような自律性をもった地域の持続可能な発展を促す役割を持つ.

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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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