日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 622
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発表要旨
山形盆地北部,村山市浮沼における盆地地下堆積物と第四紀後期テフラ
*鈴木 毅彦笠原 天生八木 浩司今泉 俊文吉田 明弘
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抄録

東北日本弧南部に位置する山形盆地は,奥羽脊梁山脈西方に多数発達する内陸盆地群の一つであり,他の盆地同様に南北方向の活断層を境に周辺の丘陵・山地列と接する.山形盆地では西縁に活断層が集中するが,北部では南部に比べて多数の活断層が認定されており,西側の丘陵・山地を接する単純な断層のみが発達するのではない.とくに盆地北部の村山市周辺では,盆地中央部に存在する地形的な高まり(川島山)の東側においても,北北東−南南西方向の活断層の存在が指摘されている(都市圏活断層図;八木ほか 2001など).この様な盆地における地形発達史や断層帯の活動史を明らかにするには,盆地地下の堆積物に対する編年学的研究や堆積環境の復元は必要不可欠である.しかしこれまでこうした研究は充分に行われていない. 本研究では山形盆地北部において盆地地下堆積物と第四紀後期テフラの層序関係を明らかにするため, 2013年10~11月に村山市浮沼(河島山東方付近)の沖積低地(標高81.40 m地点)において,深度101.00 mのオールコアボーリング(MR-13-1)を実施した.本講演では,本コアの概要を述べるとともに,検出されたテフラを予察的に報告する. [層序] 本地点の深度約100 m以浅は細粒堆積物が卓越する.表層から深度37.65 mまではシルト層からり,ところにより有機質である.深度38.75~40.45 mは砂礫からなるが,その下位は,層厚60 cm以下の2枚の砂礫薄層を除き,深度64.60 mまでシルト~有機質シルト層が卓越する.深度64.60 m以深はシルト層以外に,砂礫層,砂層が出現し,層厚なものとして,深度64.60~70.75,85.50~89.80,93.96~96.95 mに砂礫層が認められた. 現段階では,深度3.34~3.47 m,35.34 m, 75.86~76.24 mにそれぞれテフラが検出されている. [テフラの記載] 深度3.34~3.47 mには,厚さ13 cmの灰色~白色降下火山灰が挟在する.深度3.42~3.47 mから得たサンプルには,ホルンブレンド,斜方輝石が認められる.ホルンブレンドと斜方輝石の屈折率はそれぞれ,n2=1.670~1.673,γ=1.709~1.714であり,火山ガラスの屈折率はn=1.499~1.500を示す.こうした特徴は,山形県中北部の肘折カルデラを起源とする肘折尾花沢テフラ(Hj-O,11~12 ka;町田・新井 2003)の特徴に一致し,同テフラと対比される可能性がある. 深度35.34 mには,最大層厚 4 mm のレンズ状の白色ガラス質火山灰層が挟在する.バブル型と平行型の火山ガラスを主とし,火山ガラスの屈折率はn=1.496~1.500と低い.また火山ガラスはごくまれに石英を包含する.こうした特徴から,本テフラは南九州の鬼界カルデラを給源とする鬼界葛原テフラ(K-Tz,95 ka;町田・新井 2003)と対比される可能性がある. 深度75.86~76.24 mには厚さ38 cm の降下火山灰層が検出された.有色鉱物として斜方輝石を含むほか,石英,スポンジ型,繊維状軽石型の火山ガラスを特徴的に含む.斜方輝石の屈折率はγ=1.724~1.730であり,火山ガラスの屈折率はn=1.498~1.502であった.本テフラは周辺火山を給源とするテフラに対比される可能性がある. 上記テフラに関して今後火山ガラスの主成分化学組成を測定し,対比・同定の確度を高め,同時に放射性炭素年代測定を実施する予定である.     引用文献 八木ほか 2001.都市圏活断層図「山形」.町田・新井 2003.火山灰アトラス.東京大学出版会

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