日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 711
会議情報

発表要旨
ドイツ地理教育におけるESDの取り組み
ラインラント=プファルツ州を事例に
*阪上 弘彬
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

2000年のPISA(国際学力調査)ショック以降、ドイツ国内では学力、学校教育の質的向上のもと、様々な教育改革に関する取り組みがなされてきた。KMK(各州文部大臣会議)や各教科の関連学会が作成に携わった国家レベルの教育スタンダード(Bildungsstandard)は、取り組みの一部である。この取り組みとともに、ドイツの学校教育改革において注目したい点が、ESD(持続可能な開発のための教育、ドイツ語:Bildung für nachhaltige Entwicklung ;BNE)である。ドイツの学校教育におけるESDは、PISAショック等外的要因等によって露呈した教育の地域間・経済間格差にアプローチする手段として位置づけられており(高雄、2010)、ドイツの教育改革における重要なテーマであることがわかる。  地理教育においてもESDは重要なテーマの一つであり、DGfG(ドイツ地理学会、2012;初版は2006年)が公表した「ドイツ地理教育スタンダード」(Bildungsstandards im Fach Geographie für den Mittleren Schulabschluss)においても、ESDの概念やそれを意識したカリキュラム構成、コンピテンシー(Kompetenz)みることができた(阪上、2013)。一方で、「ドイツ地理教育スタンダード」は、法的拘束力がないスタンダードであり、あくまで各州の地理カリキュラムに対して大枠を示したものである。これらの内容に取り組むかは、依然として各州の文科省が作成する各州学習指導要領(Lehrplan)によるところが大きい。  「ドイツ地理教育スタンダード」と州レベルの対応を分析した研究として、大髙(2010)がある。大高はバーデン=ヴュルテンベルク州(Baden-Württemberg)の地理カリキュラムを事例に、両者の差異を明らかにした。しかしながら、分析した地理カリキュラムが「ドイツ地理教育スタンダード」以前に作成された点やESDの観点が含まれていないことから、ドイツ全体と州のESDにおける取り組みの対応は明らかになっていない。 本研究ではラインラント=プファルツ州(Rheinland-Pfalz)が、来年度改訂する地理カリキュラム案におけるESDの観点と、「ドイツ地理教育スタンダード」との対応関係について、作成者の一人であるDr. Annegret Schwarz先生から聞き取り(2013年11月28日)を実施した。本発表では、その内容を中心に、ドイツ地理教育におけるESDの取り組みについて報告するものである。

著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top