抄録
広島大学総合科学部・総合科学研究科での一実習(地域調査演習)の一環として,山陰海岸ジオパークで調査を行った。本報告では,その結果に基づき,ジオパークに対する住民および観光客の認識について考察する。行ったことは,観光客へのアンケート調査,いくつかの地区でのジオガイドへのヒアリング,一般住民へのヒアリング,それと住民へのWEBアンケート調査である。なお,山陰海岸ジオパークは東西にかなり長いエリアとなっているため,今回の調査ではジオパークの西部地域を対象とした。観光客へのアンケート調査からは,山陰海岸ジオパークエリアは一度には限られた範囲しか周遊対象にならないものの観光者は広範囲にエリア内を訪問した経験をもっていること,回答者の半分以上が「ジオパーク」の名称を知っていること,ただし,知っているのは名前まででジオパークの内容についてはよく知られていないこと,ジオパークエリアでの活動として「学び」への関心はあまり高くなく,ジオパークのアピールポイントについても温泉や食への関心が高い一方で,いわゆるジオストーリーや自然環境への関心が相対的に低いこと等が確認された。ジオガイドへのヒアリングでは,ガイドの地域への思い入れやまちづくりへの関心の高さは,調査対象地すべてで強いものの,ガイドにとってジオパークであることは現時点ではまだ二次的なこととして認識されている。山陰海岸ジオパークは東西120kmもの広がりがあり,そこをまとめる困難さを抱えている。そのようなこともあって,地域への浸透度は,まだ名称レベルにとどまっているのかもしれない。本発表では,これら一連の調査結果の概略を報告する。あわせて,今後のジオパーク活動を進める上での課題についても言及したい。