日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S0102
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発表要旨
中国における多国籍企業のR&D機構立地について
都市イノベーションの視点から
*王 承云
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抄録


Ⅰ はじめに

2008年9月のリーマンショック以降、世界経済が急速な減速を余儀なくされる中で、いち早く景気回復を遂げた中国に対する多国籍企業の関心は従来にも増して高まっており、新たな投資ブームが到来しつつある。

そして、2010年における中国のGDP総額が日本を抜いて世界第2位となる中、多国籍企業の中国における事業展開も、従来の「製造拠点」と「輸出拠点」としての展開から、「中国市場販売」と「研究開発拠点」としての展開へと加速に移行しつつある。本稿では中国における多国籍企業の研究開発(R&D)に関する先行研究レビューを行い、まだ明らかになっていない課題について検討するものである。

Ⅱ 中国における多国籍企業進出の推移

中国における多国籍企業の直接投資の歴史を振り返ると、四つの段階に分けられると言えよう。1980年代に始まりの最初の段階では、多国籍企業が対中直接投資を本格化させる契機となった。第2段階、1991~1999年頃までで、鄧小平氏の南巡講話に代表される外資導入の本格化や市場経済化の加速を受けてきた。第3段階、中国のWTO加盟が視野に入ってきた2000年から2008年頃までの期間である。第4段階、2008年9月のリーマンショック以降、世界経済が急速な減速を余儀なくされる中で、新たな投資ブームが到来しつつある。

中国は2001年12月にWTO加盟、以来中国への直接投資流入は世界的な規模で起こっているといえる。構造多様化、進出先は三大地域に集中同時に内陸へ移動傾向がある。

 

Ⅲ 中国における多国籍企業R&D機構の進出と特徴

多国籍企業の対中投資R&D機構の前に、すでに先一歩中国では生産性投資が進んである。一般的中国における製造業の投資が多ければ多いほど、R&D機構の投資も多くなるという規律がある。中国に対するR&D関連投資の多い国・地域は、米国、日本、欧州及び香港・韓国・台湾・シンガポールなどのNEIS地域である。

中国市場で「売れる」製品の展開に向けては、多国籍企業の母国での研究・開発のみに依存していると、市場のスピード・変化に対応できないとの問題意識も強まりつつある。そのため、多国籍企業の中には中国に研究・開発拠点を設置し、当該拠点にて中国市場のニーズに合致した製品・サービスを開発し、売り上げ拡大を図る動きが加速しつつある。中国でもっとも注目されたのは、多国籍企業によるR&D機構の設立である。研究機構は沿海型、都会型立地である。

Ⅳ 上海における多国籍企業R&D機構立地の要因

  中国での研究開発拠点を機能させるためには、当然のことながら、中国人の消費習慣・嗜好を理解する中国人技術者の採用・育成・活用が欠かせないが、研究開発コストの面からも、安価な中国人技術者や地価などを活用して研究開発を行うことが競争力向上の一つの手段という見方もある。

 
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