日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P916
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発表要旨
茶畑によるクールアイランド効果
*川島 あゆみ赤坂 郁美
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抄録



近年、都市部におけるヒートアイランド現象が、大気汚染物質や熱中症患者の増加を引き起こす要因として問題視されている。ヒートアイランドの緩和策として、緑地のクールアイランドに関する研究が多くなされているが(例えば菅原ほか,2006)、農業用の畑地におけるクールアイランド効果の研究例は少ない。小規模な畑を複数点在させることによって、大規模緑地より広範囲に冷却効果が広がっていく可能性がある。畑地の研究例として榊原(1994)が、水田が郊外に広がる場合のクールアイランド効果を研究しているが、水田は季節によって条件が変化し、年間でのクールアイランド効果の変化が大きい。そこで本研究では、季節による変化が少ない常緑照葉樹である茶畑に着目し、茶畑によるクールアイランド効果とその影響範囲を明らかにすることを目的とする。

調査方法は、土地利用による気温の違いを把握するために徒歩または自転車による移動観測を行い、更に時間変化による気温の移り変わりを把握するために茶畑と周辺市街地にて定点観測を行う。

茶畑によるクールアイランド効果を明らかにするために、狭山茶の主要産地である埼玉県入間市を調査地域とする。入間市の茶畑が広がる周辺は、北側に標高203.6メートルの加治丘陵があり、麓は住宅地となっている。住宅地と茶畑の間には霞川が流れている。また、茶畑の南側には首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が通っており、圏央道の南側は倉庫や工場が立ち並ぶ武蔵工業団地となっている。

夏季に集中観測を行う前に、2015年6月2日に予備観測調査を行った。観測は自転車による気温の移動観測を行い、ほぼ一直線に引いた観測ルートを往復し、片道30分以内で観測が行える様に北側の住宅地2地点、茶畑のある場所4地点、圏央道の南側の工業団地4地点の計10地点を選定した。観測にはデータロガー付温度計(T&D社製、おんどとりJr.TR-52i)を使用し、牛乳パックで作成したシェルターの内部に温度センサーを挿入した状態で棒に付け、自転車の前かごに取り付けた。観測時間は13時30分~14時30分、20時30分~21時30分であり、観測終了後に14時と21時に時刻補正を行った。観測対象地域周辺では昼前頃から風が1.5m/s以上吹き、日中の観測時間帯には南風が顕著であった。一方夜間の観測時間帯には風が0.5m/s以下となり、静穏な時間帯が多かった。また、日中の日照時間について、午前中はよく晴れていたが、観測開始の13時30分頃に雲が厚くなり始め、それ以降は日照時間0分と曇りの天気となった。

観測結果について、図1に示した。いずれの時間帯も畑地で気温が低めに出る傾向がみられ、一般風が強い時間帯と、夜間の風が静穏な時間帯の異なる条件下で観測を行ったが、畑地内ではいずれの状況でもクールアイランド現象が発生しているといえることが分かった。

夏季の集中観測による本調査の結果は、発表にて述べる。

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