抄録
1.はじめに<BR>
年次別老衰死因順位は,1953~1957年に第3位と最も高くなったが,その後,順位を下げ,1996~2007年は第7位と最も低くなった。2009~2013年には第5位(2011年第6位)と再び順位を上げている。<BR>
高齢になるほど老衰を死因とする比率が高くなるため,今後,高齢化がさらに進行すると,老衰による死亡の比率は現在よりもさらに上昇すると予測され,老衰死亡の動向を把握することは,医療・社会福祉政策の観点から重要である。<BR>
発表者は,老衰死亡率の推移,老衰死亡割合の推移,老衰死亡率の季節変化に関してすでに報告した(北島,2014)。<BR>
本研究では,都道府県別老衰死亡の地域差について,最近の傾向を,標準化死亡比(SMR),年齢調整死亡率,死因別死亡確率から分析した。<BR>
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2.研究方法<BR>
使用したデータは,SMR(『平成20年~平成24年 人口動態保健所・市区町村別統計』,厚生労働省)(以下では2010年と標記),年齢調整死亡率(『平成22年都道府県別年齢調整死亡率』,厚生労働省),死因別死亡確率(『平成22年都道府県別生命表』,厚生労働省)である。<BR>
4大死因(悪性新生物,心疾患,肺炎,脳血管疾患)の地域差と老衰の地域差を比較するために,これらの死因のデータも使用して主成分分析を行った。<BR>
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3.5大死因のSMR,年齢調整死亡率の主成分分析<BR>
47都道府県をケース,男女の5大死因のSMRを変数として主成分分析を行い,主要な第1(寄与率35.0%),第2成分(寄与率30.3%)が抽出された。第1成分と第2成分の成分負荷量の散布図(図1)からみて,第1成分は,肺炎,悪性新生物,心疾患,第2成分は老衰,脳血管疾患の変動を主に説明するパターンである。<BR>
男女の年齢調整死亡率を変数として主成分分析を行い抽出された第1,第2成分もSMRと類似した特徴を示した。<BR>
SMR,年齢調整死亡率の第1成分の主成分得点がいずれも高い府県は,青森県,大阪府,秋田県,栃木県,低い県は,長野県,沖縄県,山梨県,静岡県である。同様に第2成分の主成分得点がいずれも高い県は,静岡県,栃木県,岩手県,低い府県は,福岡県,沖縄県,大阪府,佐賀県である。<BR>
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4.5大死因の死因別死亡確率の主成分分析<BR>
47都道府県をケース,男女の5大死因の死因別死亡確率(0歳)を変数として主成分分析を行い抽出された第1成分(寄与率41.3%),第2成分(寄与率19.7%)の成分負荷量の散布図を図2に示す。第1成分は,老衰・脳血管疾患と,肺炎・悪性新生物が逆の変動をするパターンであり,第2成分は,心疾患の変動を説明するパターンである。<BR>
第1成分の主成分得点が高い県は,長野県,静岡県,宮城県,三重県,岐阜県,低い道府県は大阪府,福岡県,佐賀県,北海道,奈良県である。<BR>