日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 330
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発表要旨
高田平野東縁地域および越後平野東縁地域に分布する河成段丘の形成過程からみる第四紀後期地殻変動
*清水 龍来
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抄録


1.はじめに 

本研究対象地域が位置する北部フォッサマグナ地域は,GPSによる最大せん断歪み速度の大きい「新潟-神戸構造帯」[Sagiya et al(2000)]に位置する.本地域には,山地や丘陵を構成する新第三系~第四系の褶曲構造や,断層関連褶曲などの複雑な地下構造が指摘されている.また,それらが活構造であることを裏付けるように地震時の地表変形が褶曲や撓曲などの長波長変形として出現する事例が確認されている[岡村・石山(2005),渡辺ほか(2005)].長波長変形の存在は逆説的には地下の断層形状の拘束条件であり,長波長変動地形の詳細を明らかにすることで,断層の地下形状や形成史の理解につながると考えられる.そこで,本研究では地形の長波長変形を累積的に記録する河成段丘に着目し,その分布や形成年代,連続性,分布高度などを明らかにする.その上で地殻変動量の検出を行い地下構造との対応を考察する.

調査地域は,高田平野東縁中部地域の保倉川流域および越後平野東縁中部地域の五十嵐川および刈谷田川流域である

­ 調査方法は,米軍および国土地理院撮影1万分の1空中写真による地形判読に加え,露頭および簡易ボーリング掘削調査を実施し段丘構成層および被覆層の層相観察を行い段丘面区分を検討した.また,段丘を覆うローム層中の鉱物の含有率に基づきテフラ降灰層準を推定し,必要に応じて屈折率及び主成分化学組成分析を行った.

 

2.段丘の対比・編年

保倉川流域では9段,五十嵐川・刈谷田川流域では11段に段丘面を区分した.そのうちH6面は,構成層を覆う風成層下部にIz-Ktc(125-150ka)を挟在する.また基盤が露出する現河床とは異なり厚い構成層(8m以上)からなる.よって顕著な氷期MIS6に対比できる.M1面は,風成‐水成境界付近に,My-HB(130ka)やTt-D(120-130ka)が検出されることからMIS5eの形成であると考えられる.M2面は葉理が発達する砂ないしシルトで構成され水成‐風成境界付近にK-Tz(95ka)起源のβ石英が濃集することからMIS5c-aの形成と考えられる.M3面は水成‐風成境界付近にDKP(≧55ka)の挟在が報告(小林ほか2002)されており,MIS4-3間の亜氷期の形成であると考えられる.L1面は風成層最下部にATが挟在することからMIS3‐MIS2の形成と考えられる.L2面は風成層中にAs-K(15-16.5ka)が挟在し,ATは確認ず,また基盤が露出する現河床と異なり厚い礫層(10m以上)を持つことから顕著な氷期MIS2に形成された可能性が高い.L3面およびL4面はローム層を載せず,黒色土壌層中からもAs-Kが検出されないため完新世段丘である.

 

3.隆起速度分布と地下構造

段丘面の編年に基づき,TT法,FS'法を用いて隆起速度を推定した.保倉川沿いでは高田平野東縁断層帯地表トレースの東方約1.5km地点から約4km地点は隆起速度が徐々に増大し(約0.3mm/yr-0.8mm/yr)西への傾動を示す.産総研(2006)の反射法地震探査に示される断層面近傍の基盤岩は西方への傾動を示さず,その直上に分布するM2面も同様に西への傾動を示さない.これは地下の断層がフラット‐ランプ構造を形成しているか,分岐した高角な断層の伏在を想定することで説明できる.また断層トレースから約5km地点,熊谷向斜東翼では基盤の急傾斜と調和的に隆起速度が増大(1.3mm/yr)する.熊谷川向斜東翼ではH1面の高度不連続および2本の開析谷の右横ずれが見られることから.北部セグメントの上盤側の一部が,雁行する南部セグメントによる変形を被っている可能性がある.五十嵐川では,防科技研(2008)の反射法地震探査が示した地下構造と調和的な隆起速度分布が得られ,地下のランプ構造上で隆起速度が大きい(0.8mm/yr).刈谷田川では,東山背斜の北部延長にあたる地域で約0.75mm/yrの隆起速度が得られた.
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