日本地理学会発表要旨集
2015年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 407
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発表要旨
宮城城県野蒜海岸における2011年東北地方太平洋沖地震津波後の地形変化の定量的把握の試み
*小岩 直人武田 開葛西 未央伊藤 晶文松本 秀明
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抄録

はじめに
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,地盤の沈降,津波による海浜地形の侵食という形で大きな地形変化をもたらした.本発表では,宮城県中部東松島市の野蒜海岸を対象とし,撮影日の異なる複数の航空写真や衛星画像による解析,高精度GPSを用いた現地での測量を基に,東北地方太平洋沖地震津波に伴う地形変化,および,その後の地形変化について考察した結果を報告する.
調査方法
調査は,国土地理院で撮影された航空写真(津波前,津波直後),GoogleEarthの衛星画像(津波後~約3年後)を用いて津波時およびその後の地形変化傾向の検討を行った.津波時の海浜の侵食量は,津波前および津波後の国土地理院のDEM(2mメッシュ)を用いて,GISによって作成した標高分布図から算出を試みた.調査地域の地震時の沈降量は0.5mと推定されていることから,2005年の標高値を用いてTINを作成し,標高0.5m以上の地形の体積を津波襲来直前の海浜地形の堆積量とした.また,津波後の堆積土砂量は,現地においてマゼラン社製のProMark3,ProMark120を用いてキネマティック測量を実施し,その結果をGISにより標高分布図を作成,これから算出した.
結果
調査地域における津波の浸水高は5-8mとほぼ一定であるが,南部と北部では津波時の侵食,およびその後の堆積傾向は異なっている.すなわち,南部では,防潮堤の強度が小さいこと,および海浜背後に存在する水域の存在により,津波が進入しやすくなり,その結果,海浜部は激しく侵食され,海岸線も後退している(図1).一方,北部では,小さな筋状の谷が刻まれるものの,海岸線の大きな後退はみられない.調査地域全体の津波時の侵食土砂量は約88,000m3,2014年までの津波後の新たな土砂堆積量は約67,000m3と算出され,津波時に消失した土砂の約8割程度が回復していると推定される.侵食が激しかった南部では,津波後,比較的短時間に平滑な海岸となり,また,堆積土砂量は大きくなっている.一方,津波時の大きな変化が生じなかった北部では,津波後には海岸が幅50m以上も後退している.これらのことから,南部において激しく侵食された海岸は,津波後の北部の海岸侵食による土砂により,修復されていると推定される.ただし,海岸が後退している北部においても,津波後の堆積土砂量は減少していないことから,津波時に侵食された土砂も海浜の修復には大きく関与しているものと判断できる.







 

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