日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P908
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発表要旨
大学の授業成果の出版によるアウトリーチ効果の検証
*長谷川 直子
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キーワード: アウトリーチ
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抄録

  1. はじめに/方法 演者は総合学としての地理の視点を広く社会に広めるため、大学で実施した1授業の成果を2016年3月に出版した(お茶の水女子大学ガイドブック編集委員会編2016).この雑誌に綴じ込みの読者アンケートから、購入動機や、読んだ結果の満足度などを調査した. アンケートハガキは雑誌に綴じ込みの形をとった。雑誌の販売から約3ヶ月後の5月末時点で回答があった17名のデータをもとに集計した。
  2. アンケートの結果 アンケート回収数は17である。回答者の属性については以下の通りである。男10,女7.10代1,20代1,30代2,40代4,50代4,60代3,70代1,90代1.お茶の水女子大学に関係ある5,ない10,未回答2. 職業は会社員1,公務員2,出版印刷関係2,主婦1,書店員1,流通業1,大学(院)生3, 高校生1,中高教員1,無職4であった.  雑誌をどこで知ったか:月刊「地理」1,古今書院HP2,その他のHP2,大学の掲示1,書店の店頭4,知人・友人2,その他7.  どんな点に惹かれて購入したか(複数回答可)については図1に示す。地理女子による解説が17名中11名と最多であった。続いてタイトル(8),専門家のコラム(6),ガイドマップ実践例(5)と続いた(その他の回答:大型書店にも在庫がなく、中身も見ずに客注)。
 満足した点は表紙(9)、内容構成(12)、内容充実度(12)がそれぞれ高く,その他の回答は「とかく地理は女子に人気がないと言われているが、地理女子らしさ(きめ細かい視点)が全面にわたって出ている点に好感がもてました」,不満足な点は価格(5)が最多で,未記入(6)も多かった(その他の回答(2)は「地図や絵等は大きく載せてほしい/内容の区切りがあいまいで、突然別の内容に変わる印象。でもそれは味のうちでした」).  全体を通しての満足度(4段階評価)は満足(5),まあ満足(12), やや不満(0),不満(0)であった.  続編があれば購入したいかとの問いにははい(13),いいえ(0),なんともいえない(3),未回答(1)であった。  雑誌全体に対する意見(自由記述)は17名中12名が記入していた。その幾つかを紹介すると、「総じて興味深い内容」「大学での勉強を垣間見ることができ、とても興味深かった」「リケジョや歴女が注目される昨今、いよいよ地理好き女子の登場を嬉しく思いました」「地理の楽しさ、面白さを大人向けに発信してください!」「地理出身者にとっては、まさに夢のような冊子。学生時代のワクワク・ドキドキ感を思い出しました」「地理学でどのようなことを研究・実践するのかよく知らなかったが、その(ほんの)一部を垣間見ることができた。ガイドブックとしても上質。週末に原宿さんぽしたくなった」「地理学の一般普及という観点から提案されたこのような書物がもっと多く出ればと思う」などと、他のエリアを作って欲しいと小日向と多摩地区を提案する意見がそれぞれあった。  
3.まとめ 今回の読者アンケートハガキからは雑誌に対する評価は概ね好評で,今回の雑誌の内容のようなものに対するニーズもあるということがわかった。しかし,回収数が限られていることと,雑誌綴じ込みアンケートに回答し投函する読者は雑誌自体を高評価しているバイアスには注意する点がある.読者アンケートでは好評だったが,表紙はセクハラ,地理女子による解説は内輪受け,全体的にレベルが低くお茶大や地理の名声を貶めたといった否定的な意見があったことも留意する必要がある.何れにしても否定意見も含め,授業成果を発信することやアウトリーチ活動を行っていく上での何らかの示唆は得られたと思われる.

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