日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 114
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発表要旨
公開情報から作成した歩道ネットワークデータとその活用
*柳場 さつき石川 剛谷口 亮
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抄録
【はじめに】 近年,誰もが同様に生活できるノーマライゼーションの理念が浸透しつつある。また,2020年の東京オリンピック・パラリンピックに備え,移動の円滑化や施設のバリアフリー化は重要な課題であり,国を挙げて整備が進められている。  一方,こうした施設情報を記号化した空間データ整備には多大な労力が必要で,バリアフリー情報等の付与には,さらに時間もコストもかかることが想定される。そこで本研究では,公開情報(国土地理院提供の基盤地図情報および空中写真)とGISを用いて一般歩道および視覚障害者誘導用ブロック(以下,点字ブロック)を抽出し,これらを結合して簡易的な歩道ネットワークデータとすることを試みた。また,移動困難者にとってより安全・安心なルート選定が可能かも併せて検証する。
【データ作成手法】  歩道ネットワークの整備フローは以下の通りである。
① 基盤地図情報から道路縁および道路構成線を抽出
② ①をポリゴン化し,中心線データを作成
③ 空中写真(図1)から点字ブロックを抽出
④ ③をオートトレースしてラインデータを作成
⑤ 空中写真から横断歩道を抽出
⑥ ⑤からラインデータを作成
⑦ ②,④,⑥を結合し,ネットワークデータ化
⑧ ⑦に対して幅員と5mDEMから傾斜角を付与
⑨ ⑧を大縮尺データと比較して精度検証
【データ作成対象地区と精度検証】 東京都文京区は2015年にバリアフリー基本構想を策定し,全域が重点整備地区となっており,点字ブロックや音響式信号機の整備が進んでいる。文京区を対象に前述の手法を適応したところ,実質2週間程度でデータ整備を完了した(図2)。また別の自治体において,既に整備済みの道路データ(1/500)と,本手法で作成した点字ブロックデータの精度を比較したところ,水平方向のズレの平均は40cm程度,真値に対する座標精度は1m程度で取得できることを確認した。
【結果と考察】 GIS上で経路検索を実行すれば,「単純な最短ルート」「点字ブロック優先ルート」「起伏の少ないルート」「幅員の広いルート」といった,ユーザーニーズに併せた選定が可能となる。こうした歩道ネットワークデータを用いて,たとえばベビーカー,車イス,高齢者,視覚障害者など移動に困難を伴う方々にとって,リスクの少ないルートを予め調べることができる。また,インフラ整備において対策が必要な箇所を視覚化できるメリットがあると考えられる。
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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