日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 208
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要旨
商業地を対象とした地理学研究の分析視点
*牛垣 雄矢
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抄録

1.研究目的
商業地を対象とした地理学研究の分析視点は多様である.いわゆる地理学の主要学会誌へ掲載された比較的近年の論文をみても,場所論(杉山ほか2015),オタク文化論(和田2014),文化産業論(矢部2012),均質空間論(牛垣2012),音楽の地理学(成瀬2012),ストリート・ファッション論(川口2008),仲間型組織論(安倉2007)などがあり,いずれも異なる分析の枠組みが設定されている.
言うまでもなく,地理学には地誌学と系統地理学という2つの視点が存在することにより,「地域主義」・「現場主義」を掲げる地理学教室も少なくなく,報告者もそのような教室に在籍・所属してきた.この立場で研究をする場合,対象地域を設定し,詳細に調査・分析することになるが,その結果として「地域から何を語るか」に悩まされることがあり,その原因は研究の枠組み設定が明確でない場合が多い.それぞれ異なる分析枠組が設定されている商業地研究においては,特にこれが当てはまるように思える.そこで本発表では,比較的近年の研究として,1990年以降に発表された商業地を対象とした地理学研究論文について整理・分類し,その分析視点を提示したい.

2.結果
1990年以降に発表された商業地を対象とした地理学研究を,図のとおりに整理・分類した.各論文が①から⑮のいずれかに該当するということではなく,一つの論文で複数の分析視点を有する場合もある.①地理的に特徴ある地域を対象とした研究では,若者の街,オタクの街,優れた景観を有する街が対象とされ,それぞれ研究の枠組み設定が問題となるが,地域の特徴が形成された背景・過程を明らかにしたものが多い.空間的観点による研究としては,③対象地域内部の構造やその変容に関する研究,④都市圏や都市内部で生じた構造変容が表れている地域として位置づけられた研究がある.これらはいずれも地域や場所に関する研究といえるが,地域に対する研究というよりも,⑫人と人との関わりや,⑬人間による空間への意味づけなど,地域を舞台としてそこに生きる人々に注目した研究もある.

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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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