日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 406
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要旨
東京におけるMICE誘致のための空間活用方策の現状と課題
*杉本 興運菊地 俊夫
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抄録

研究の背景と目的  世界の都市間競争が激化する中、MICEの誘致が都市の国際競争力を強化するための重要な施策としてみなされるようになった。MICEとは、Meeting(企業系会議)、Incentive(企業の報奨・研修旅行)、Convention/Congress(国際会議)、Exhibition /Event(展示会・イベントなど)といったビジネスイベントの総称である。MICEは人の集積や交流から派生する様々な価値を生み出すが、その主要な効果として、1)ビジネス・イノベーションの機会の創造、2)地域への大きな経済効果、3)国・都市の競争力向上が指摘されている(MICE国際競争力強化委員会2013)。なかでも、大規模かつ話題性の高い国際会議や展示会・イベントの誘致が、シティセールスという観点で都市政策やまちづくり事業で注目されている。 Convention分野に着目すると、東京の国際会議の開催件数は年々増加しており(図1)、UIA(Union of International Association)の2014年の国際会議統計によると、東京は228件の開催によって世界第6位となったが、シンガポール(850件、第1位)やブリュッセル(787件、第2位)といったさらに上位の競合都市との差は歴然としている。今後の東京のMICEのさらなる誘致力強化のためには、組織や人材面での対策に加え、MICEに適した空間基盤の構築やアフターコンベンションにおける観光ツアーのための地域連携強化といった空間面での対策が必要である。本研究では特に後者に着目し、東京におけるMICE空間基盤の特徴や都内の各地域のMICE施策としての環境整備の取り組みを調べ、その現状や課題を明らかにすることを目的とする。 MICE受入拠点の整備事業  MICEを受け入れるための空間基盤の条件として,会議・宿泊・商業・娯楽等に関する機能を有した施設が一定のエリア内へ集積していることが重要となる。海外の競合都市では、そうした機能を一体化させた大型複合施設を整備している(シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズなど)。東京にはそのような複合施設は存在しないため、代わりにMICE関連施設の集積している地域をビジネスイベント先進エリアとして指定し、MICE受入拠点の育成を支援している。具体的には、主体的にMICE受入体制の強化を図ろうとする地域に対して、提案事業への補助金交付や東京観光財団によるハンズオン支援を実施している。現在、大丸有地区、港区(六本木・赤坂・麻布エリア)、臨海副都心の3つの地域がビジネスイベント先進エリアとして指定され、地域独自の資源や空間を活かしたMICE関連事業を展開している。 研究方法 本研究では、上述した目的を達成するために、東京都へのMICE受入拠点育成事業や事例地域の各種取り組みに関するヒアリング調査を行った。また、補足調査として地理情報システムを使用したMICE関連施設の規模や立地の分析を行い、各地域のMICE空間基盤の特徴を比較した。

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