日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0301
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要旨
近年の災害が提起したハザードマップの課題 -工学と地理学の視点から-
*小口 千明
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抄録
2004年、「ハザードマップを活用した地震被害軽減の推進に関する提言」が、日本地理学会より提出された(http://www.ajg.or.jp/disaster/suggestion.html)。これは、2003年3月および2004年3月に開催された一般公開シンポジウム「災害ハザードマップと地理学-なぜ今ハザードマップか?」と、「地震被害軽減に役立つハザードマップのあり方を考える」をふまえ、地域防災力向上のためにはハザードマップが有効であることを再確認したうえでの提言内容である。 その提言の実現に向け、日本地理学会は、被害軽減のための地震防災対策の構築やその実践に関わる関連諸機関および諸学会に対し、協働の取り組みとその推進を呼びかけるとともに、①活断層研究の継続的推進、②土地条件図や地理情報システム等、地理学的知見のハザードマップ作りへの適用、③生涯学習の場における防災教育、④地理教育における体系的防災教育の実現、等において具体的な取り組みを強化するよう要望してきた。 それから10年が経過し、防災行政による積極的なハザードマップ整備が進み、ハザードマップそのものは確かに身近になった。またGISの普及により、地図情報そのものを迅速に見ることができるようになった。一般の人々の災害に対する認識もいくらか高まったものと感じられる。しかし、ハザードマップの作成方法が隣同士の市町村で異なっているがために避難所の配置が適切に行われていないケースや、無理な避難経路を示している事例の存在も指摘されており、実際にの災害被害の軽減にどの程度役立っているのか、再考する段階にきている。 実際、2004年以降に、日本海中部地震や東日本大震災、伊豆大島や広島の豪雨による土砂災害がなど、多くの犠牲者がでる災害が発生した。昨年(2015年)9月の常総水害も記憶に新しい。これらの甚大な災害発生時には、ハザードマップは果たして役に立ったのであろうか? 十分活用しきれていない状況も散見されていないだろうか? ハザードマップを役立てるのは地理学者の責務でもある。過去のシンポジウムでもたびたび取り上げられてきたこの命題について、より効果的なハザードマップの在り方や適用方策について、いくつかの事例を取り上げ、俯瞰的・総合的見地から議論する。
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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