日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0401
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要旨
災害も含めた持続可能な社会の構築に向けて
ジオパークにおける科学と社会の交差
*鬼頭 秀一
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抄録
自然災害が多発する現代において、自然災害に対する根本的なあり方の見直しが求められている。人間の自然との関係は、従来は、恵み多き自然との関係であり、保護するべき脆弱な自然環境との関係であった。しかし、自然は時として荒ぶる自然として自然災害の形で立ち現れる。自然災害に対しては、科学技術の力で自然を征服し、ねじ伏せるような形で対応するあり方が基本的なあり方として考えられてきた。しかし、恵み豊かな自然と荒ぶる自然を全体として捉えてその関係を探るような新たなあり方が求められるようになってきている。自然に対する人間の対応のあり方、その構えについてについてその新たな関係を捉えようとしている環境倫理学の中でも、災害も含めた「包括的な福利」で捉えようとするあり方も重要であると考えられている。そして、その考え方を背景として、持続可能な開発、持続可能な社会の構築も、自然災害に対するあり方も含めた全体としてのあり方が求められている。そのような荒ぶる自然環境を端的に表現したものとして、火山も含めた大地のダイナミックな動きである。その大地のダイナミックのあり方を象徴的に見ることができるものが中心になって、ジオパークが構想されてきている。ジオパークは、人間と荒ぶるダイナミックな自然との関係を表していると言ってもいい。そのようなジオパークの「資源」と人間が向き合うことで、自然災害も含めたダイナミックな荒ぶる自然との関係のあり方が示されるのである。そこにおいては、ダイナミックの自然を表現する科学の言語と、災害も含めて自然と関わりあってきた、また、これから関わろうとする人間の生活や営みの仕方がどのように関係を結ぶのがいいのかが問われている。自然災害も含めて、荒ぶる自然と人々との対応の中で、さまざまな伝承や言伝が活字の記録であったり、口伝のような形で残されている。荒ぶるダイナミックな自然との関係のあり方も、地域のローカル知、文化として現れているのである。そのような地域に根ざしたさまざまなローカル知と、地質学や火山学等の科学知の関係のあり方を捉えなおし、災害も含めた形での関係のあり方を模索していくことは、自然災害に同向き合い凌ぐのかという問題と密接に絡み合っている。ジオパークは、まさに、そのようなことが交差する中に存在している。そして、ジオパークが地域社会における資源として捉えられ、それを基にして地域社会づくりを行っていくために重要な役割をすることが期待されているが、それは、そのジオパークにおける、科学ちとローカル知、科学と社会の関係のあり方が問われているのである。そのような関係のあり方、今後のあるべきあり方などを明らかにしたい。 
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