日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S405
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発表要旨
農村空間の商品化と「田園回帰」
*中川 秀一
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抄録
農村での生活経験がなく都市圏で暮らしてきた人々が、新しい生活の舞台として農村生活を始める動向を「田園回帰」と呼ぶようになって久しい。小田切・筒井(2015)をはじめとする農文協のシリーズ本が刊行され、国土形成計画(2015)でも言及されるなど、一定の定着をしてきたようにも思える。本報告では、こうした農村への人口回帰現象の背景について、戦後における都市農村関係の変化の観点から考察し、その現代的な位置づけを明らかにする。
小田切(2015)は、「田園回帰」を人口論的、地域づくり論的、都市農村関係論的のように分類し、それぞれの論点を整理してその重層的な構成を明らかにしている。それは、空間的に言えば、人・地域・国土に対応する。また、ここでは、都市農村関係の視点を、狭義の政策論的視点と広義の未来的な課題と位置付けている。
その場合も、これまでの都市農村関係の経緯を踏まえ、現段階を位置づける作業が必要であろう。本報告では、英語圏における都市農村関係論の枠組みとその変化を踏まえながら、日本における田園回帰について、都市農村関係の現在を踏まえて考察したい。
英国を中心に議論されてきた農村空間の商品化の考え方は、高橋(1998)などによって紹介と検討がなされたのを嚆矢として、日本村落研究学会編(2005)などでさらに発展的な議論が進められ、田林編(2013,2015)では、日本の現状に即した概念の拡張もみられた。このように農村空間の商品化は、現代日本の都市農村関係を考える上でも鍵となり得る概念だと考えられる。本報告は、農村空間の商品化を、都市農村関係の現在を端的に表すものとして取り上げる。ただし、英語圏における議論と日本の状況との差異についても考慮する。
また、都市農村関係論的視点は、国土視点でもある。その意味では、国土の在り方の変遷を踏まえた考察が必要である。
本報告は、その検証の意味も含めて検討することとしたい。
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