抄録
近い将来,南海トラフ巨大地震の発生が高い確率で予測されている中で,紀伊半島沿岸地域においては,公共施設の高台移転が活発化しつつある。これにより,津波被害を最小化し,その後の復旧・復興の迅速化が期待される一方で,移転元周辺の衰退や生活利便性の低下を懸念する声もある。しかしながら,こうした高台移転がいつ,どこで,どのように行われているのかという点について,地理的視点からの実態把握や論点整理はこれまで十分に行われていない。 そこで本報告では,南海トラフ巨大地震により甚大な被害が予測されている紀伊半島沿岸28自治体(三重県伊勢市~和歌山県和歌山市)を対象として,将来の津波災害に備えた公共施設の高台移転動向を明らかにするとともに,今後の課題について考察する。