日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 632
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発表要旨
水平移流を伴わない大気境界層の地表面非断熱加熱に起因する地上気圧日変化
*中川 清隆渡来 靖
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抄録

Ⅰ.はじめに

図1は埼玉県本庄市において観測された2012年8月静穏晴天日平均の地上気温と気圧の日変化とWRFによるその再現結果である.太陽同期大気熱潮汐と思われる特徴的な気圧日変化が良く再現されている.熱圏や成層圏オゾン層で励起された慣性重力波のうち半日周期成分のみが地上まで伝播されて出現するとされる大気熱潮汐が,地表面非断熱加熱により生じる可能性について考究したので,その結果の概要を報告する.

Ⅱ.地上気圧日変化調和項の誘導

地表面熱収支式と大気熱拡散方程式から,地上日射調和項に応答する地上気圧摂動調和項が地上日射調和項に比例することが導かれ,比例定数と位相差も導かれた.地上全天日射調和和項に応答して地上気温調和項が形成され,更に地上気圧調和項が出現する.地上全天日射調和項は1日周期成分が卓越し半日周期成分がこれに次ぐが,半日周期成分は冬至に最大で夏至に最小となる.

Ⅲ.誘導地上気圧日変化と測定値の比較

図2は冬至における地上気圧日変化の予測である.6時に最大18時に最小となる一日周期,9時と21時に最大3時と15時に最小となる半日周期が重なり,合成波は7時半に最大16時20分に最小となる一つ山変化を示し図1のような二つ山変化は示さない.一日周期振動の振幅に比べて,半日周期振動の振幅が過小である.この事実は,本モデルが高次の調和項の減衰率を過大評価している可能性もあるが,本モデルが考慮していない他の付加的要因の可能性として,対流圏水蒸気に励起された半日周期慣性重力波の垂直伝播や,拡散係数等の諸パラメータの日変化,移流や地形効果等が示唆される.



  

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