日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P069
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発表要旨
日本のコンパクトシティ政策と都市構造の再考
―青森市と富山市の事例に基づいて―
*秋元 菜摘
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抄録

Ⅰ 研究の背景と目的
近年,日本では高齢化などを背景として,「コンパクト+ネットワーク」の構想(国土交通省 2014)により多極ネットワーク型コンパクトシティ政策が推進されている.本研究の目的は,同政策の代表的な自治体である青森市と富山市の事例分析に基づいて,都市構造モデルの側面からコンパクトシティ政策のデザインについて再検討し,課題を明らかにすることである.
Ⅱ 分析
シミュレーション分析によれば,青森市では一極集中型(同心円状)の都市構造をモデルとしているが(青森市 1999),既存の政策デザインではコンパクト化によるアクセシビリティの改善効果は小さいと予想される(秋元 2016).同様に,富山市ではクラスター型の都市構造をモデルとして都心と郊外核を結びつける公共交通の活用を図っているが(富山市 2008),平野部にスプロール化した郊外人口の効果的な集約化が課題である(秋元 2014a).現状分析によれば,青森市では郊外において高齢者のアクセシビリティが低下している一方,富山市では都心へのアクセシビリティが向上しているなど,政策の成果や課題が明らかになりつつある(秋元 2014b).これらの分析結果から,コンパクトシティ化の過程においては既存の郊外への対処が重要であるといえる(表1).
Ⅲ 結論
地方都市における郊外化を踏まえると,モデルとするコンパクトシティの都市構造に関わらず,現実的な課題として,短期的には既存の郊外核を適切に維持することが必要であり,中長期的には郊外の維持/撤退について政策デザインを明確化することが求められる.また,日本のコンパクトシティ政策では地形的制約や既存の都市構造の多様性など地域特性を重視した政策デザインを検討してゆく必要性が高い.

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