抄録
近年さまざまなハザードマップの整備が進み、多くの自治体がハザードマップを住民に配布するとともに、インターネットに公開している。このうち、洪水や土砂災害などのハザードマップは、水防法、土砂災害防止法等の個別法により、市町村長に作成が義務付けられ、作成のための詳細なマニュアルが国から提供されている。しかし、液状化等の地震災害に関するハザードマップについては、「地震防災対策特別措置法」に努力義務の規定はあるものの、具体的な内容については定められておらず、自治体の判断に任されている。このため、これまで、その整備、公表の実態は包括的には明らかにされていなかった。2011年東北地方太平洋沖地震に伴い、広範な地域で液状化被害が発生した。宇根ほか(2015)は、既存のハザードマップが液状化の発生を適切に予測できていなかったこと、その原因としてハザードマップの作成過程でのマニュアルの解釈に問題があったことを指摘した。本発表では、全国の自治体がインターネットに公表している地震災害に関するハザードマップを収集し、表示項目や評価の根拠とした情報などを抽出、類型化して、その特徴を明らかにするとともに、土地条件図等と照合して液状化等の評価に問題がある可能性のある事例を抽出し、液状化ハザードマップの整備に関する課題を提示する。