抄録
稠密な雨量観測データを用いて, 東京都と埼玉県周辺について降水の局地性・広域性に注目し, 事例を分類し1994年から2010年の夏季(6-9月)のうち1997年と2006年を除いた15年間を対象に, 以下の品質管理を経た全290地点の1時間値を用いて強雨発生の地域的な特徴を明らかにした. 品質管理では水平距離が5 km以上, 標高差50 m 以上移設された地点を解析対象から除外し, さらに時間降水量140 mmを超える場合, 1地点のみ孤立して観測値が大きい場合, 半径5 km以内に10 mm/h以上が3地点以上観測されたにもかかわらず0 mmとなっている場合, 雨量計データから求めた夏季15年間平均値の当該地点を含むメッシュ気候値に対する割合が, 他の地点と比べ大きく異なる地点を解析対象から除外した.
事例の分類は5 mm/h以上の地点数が日最大で全観測地点の60 %以下を局地的事例日, 60 %を超える日を広域的事例日とした.
15年間の夏季平均降水量は局地的事例日では関東山地の東斜面や都区部北部で多く, 広域的事例日では神奈川県西部から関東山地の山麓で多かった. 15年間の20 mm/h以上の年平均強雨頻度は局地的事例日では関東山地山麓と都区部西部・北部で高く, 広域的事例日では関東山地の東側斜面で高かった. 全強雨事例に占める局地的事例日の強雨頻度割合は, 埼玉県北部や都区部北部で高かった.