抄録
紀伊半島南部の海成段丘面は、高位のものから、H1面、H2面、M1面、M2面に区分できる。このうち、最も広範囲に分布していることから、M1面がMIS 5eに形成された海成段丘面であるとすいてされる。M1面の旧汀線アングルの高度は20m~60mの範囲内にあり、新宮~勝浦~串本付近で最も高い。遠州灘撓曲の西への延長部は、この範囲で最も陸域に近いことから、M1面の高度分布は遠州灘撓曲の延長部の活動と調和している可能性がある。また、新宮~木本、串本町田並周辺では、陸側が低くなるような逆向き低断層が確認される。このような構造は、沿岸域を隆起させる主断層が沿岸に近い部分にあることを暗示している。この点から見ても、調査地域の隆起の原因として、遠州灘撓曲の延長部の活動に注目する必要がある。