日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P048
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発表要旨
首都圏の夏季における気温日変化パターンの地域特性
*萩原 誠人赤坂 郁美大和 広明森島 済三上 岳彦
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抄録
1. はじめに
近年、首都圏では冬季だけでなく、夏季にもヒートアイランドが顕在化しており、熱中症患者のさらなる増加等が懸念されている。そのため、首都圏の気温を時空間的に高密度に観測することにより、各地域の気候特性を把握した上で、ヒートアイランド緩和策を講じる必要がある。大和ほか(2011)は、首都圏の気温を継続的に観測する広域メトロスという観測網を構築し、首都圏の気温分布に海風が与える影響を明らかにした。結果として、日中に関東平野全域において南からの海風による冷気移流があるときには、東京都心の風下で周囲より高温となる地域がみられることを明らかにした。しかし、首都圏のヒートアイランドや海風の吹走、これに伴う移流等の影響による各地域の気温日変化パターンにどのような地域特性があるのかは充分に明らかになっていない。そこで本研究では、広域メトロスより得られた空間的に密な気温データを用いて、首都圏の気温日変化パターンの地域特性を明らかにすることを目的とする。   2. 調査方法 広域メトロスでは首都圏の約130の小学校の百葉箱に温湿度計データロガーを設置し、10分毎に気温・湿度の観測を行っている(大和ほか,2011)。本研究では2014年、2015年の2年間を対象とし、この期間に欠測がなかった98地点の気温の1時間値を使用した。また夏季を対象とした解析を行うために、梅雨明け以降の7月21日~8月31日までを対象とした。次に、ヒートアイランドの影響が明瞭に表れる晴天日のデータを抽出するために、日降水量が0mmかつ日照時間が10時間以上の条件を満たす日の1時間平均気温データを作成した。晴天日における気温日変化パターンを分類するために、晴天日平均の1時間平均気温データを標準化し、このデータにクラスター分析を行った(ユークリッド距離、ウォード法を使用)。   3. 結果と考察 結果として、10日間の晴天日が抽出された。晴天日平均の気温の日変化パターンを分類するために、クラスター分析を行い、結合距離が不連続になるところで結合をストップした結果、7つのパターンに分類することが出来た(図1)。海風の冷却効果を強く受け、日中の気温偏差が周囲よりも低くなるのはクラスター1(C1)であった。C1は神奈川県海老名市周辺、千葉県浦安市に多く分布していた(図1b)。また夜間、朝方の気温が高いという都市部特有の気温日変化パターンがクラスター6(C6)として分類された。C6は東京23区中央部を中心に分布している。その北側の埼玉県中部及び南部にはクラスター4(C4)が広域に分布しており、12時から23時の気温偏差が周囲より高くなっている。これは風上側にある都心で暖められた空気が南寄りの風によって運ばれたことで日中の気温偏差が高くなり、これが夜間まで継続していると考えられる。
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