抄録
コーラナッツは,森林地帯を原産とするアオイ科コラノキ属コラノキ (Cola nitida) の種子であり,西アフリカの内陸乾燥地域では数世紀にわたって嗜好品として消費されてきた.17世紀後半から興隆したアサンテ王国ではコーラナッツが重要な交易品とされ,ハウサ諸王国に向けて輸出されていた.ハウサ商人たちは各民族との連携を確立することで商業ネットワークを構築し,古くから西アフリカの商人間に成立していた信用取引や委託販売を採用することで,円滑な商業取引と迅速な輸送を可能にしていた.コーラナッツは現在でもガーナ南部の森林地帯からニジェールなどの内陸乾燥地域の国々に輸送されている.現地調査から,現在のコーラナッツ取引は現地買付人や商人などの多くの人びとによって成立し,販売を他者に依頼する委託販売などの歴史的な取引方法が採用されていることが明らかとなった.また買付けでは,内陸乾燥地域の商人たちが生産者から直接コーラナッツを買付けることが一般化していることが明らかとなった.