主催: 公益社団法人 日本地理学会
グリーンランド氷床は、世界の全氷河体積の9.8%を占めることから、その変動が生じた場合、海面変化や海洋熱塩循環の変化に重大な影響を与えることが予想される。将来のグリーンランド氷床の融解条件とその影響を評価するうえで、最終氷期最盛期以降のグリーンランド氷床の復元はひとつの重要な基礎的情報を与える。この検討の出発点として、最終氷期最盛期におけるグリーンランド氷床の氷床縁の分布と氷床高度の復元図が必要になる。過去の氷床の復元には、① 氷河学的手法と② 完新世の旧汀線高度分布図と地球の粘弾性モデルを組み合わせたGIA(Glacial Isostatic Adjustment )モデルによる方法、の2つの方法がある。後者の方法を用いた最終氷期最盛期のグリーンランド氷床の復元図では、いずれも、東部と西部と北東部の3箇所で特異的に融解量の大きな地域が存在している。本研究では、この原因を完新世の最高位旧汀線高度の誤認にあると考え、西部と東部地域で、離水地形、地層、化石の産状などを再検討するための予察的な調査を行ったので報告する。