1. はじめに
馬乳酒は馬乳を乳酸発酵させてつくる、モンゴル民族の伝統食である。かつてはユーラシアの広い地域で自家生産されてきたが、現在ではモンゴルの地方部でしか自家生産されていない。ボルガン県のモゴド郡は馬乳酒生産の盛んな地域の1つとして知られている。我々は2016年8月に同市で馬乳酒の品評会を開き、51家族から51サンプルを提供して頂いた。本報告では、それらの物性値や無機成分と品評会での評価点との関連について検討した。
2. 調査地と方法
試料は、馬乳(47サンプル)と馬乳酒(51サンプル)である。2015年8月5日、馬乳酒の名産地として知られるボルガン県のモゴド郡において馬乳酒の品評会を開催し、出品者から試料を集めた。
品評会の審査は5人の審査員による配点0~5での選抜方式で行われた。本研究では一次審査での配点中央値を評価点とした。分析項目は、1)電気伝導度(EC),2)pH, 3)密度,4)糖度(Brix), 5)Ca, 6)P, 7)Mg, 8)Na, 9)Kである。評価点を応答変数、測定値を説明変数としてCART法によって分類樹木を作成した。統計解析にはRを用いた。
3.結果
評価点は0点(n=7)、2点(n=2)、3点(n=14)、4点(n=10)、5点(n=18)であり、1点はなかった。以下、3点以下を低評価、4点以上を高評価、と表現する。
馬乳酒の評価点分類樹木を図1に示した。EC(電気伝導度)が高い馬乳酒は低評価、ECが低くCaが低濃度の馬乳酒は高評価、Caが高濃度だと低評価、の傾向がみられた。ECは酸味、Caは硬度と関わる要素であり、酸味や硬度が高い馬乳酒が低評価であることが示唆された。