日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 905
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発表要旨
国勢調査の調査票情報を用いたマイクロ人口統計の信頼性検証
*秋山 祐樹仙石 裕明
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抄録

日本では人口の分布と動態の把握のために国勢調査が広く利用されている.しかし現在広く利用可能な国勢調査は,自治体単位や地域メッシュ単位に集計されており,空間的により高詳細な人口分布状況の把握は困難である.
そこで著者ほかは,これまでに建物1棟1棟の位置と形状(面積)の情報を持つ住宅地図から世帯の分布を推定し,同時に国勢調査および住宅土地統計から得られる複数の統計表から得られる世帯・居住者に関する情報を,モンテカルロシ法などを用いて確率的に配分することで,日本全国約5,000万棟の建物ごとの世帯とそこに居住する居住者の属性(年齢・性別)を推定出来るジオビッグデータである「マイクロ人口統計」を開発してきた.
既に同データは様々な研究において利用されており,著者ほかは同データを更に幅広い研究領域での利活用に拡張していくために,データの改良や最新データの整備を進めている.その一環として同データの信頼性の検証も重要である.同データは既に町丁目や地域メッシュ単位で集計した際の信頼性の検証は実施されており,高い信頼性を持つことが明らかになっている.そこで本稿では更に国勢調査の調査票情報を用いることで,複数の属性を組み合わせたクロス集計表をマイクロ人口統計と国勢調査からそれぞれ作成し,それらを比較することで,よりきめ細やかな信頼性の検証を実施した.
国勢調査の調査票情報は町字ごとに居住者1人1人の家族類型,年齢,性別が登録されている.これらをクロス集計し,家族類型(16類型)×年齢(23類型)×性別(2類型)=736種類の組み合わせの居住者数を町字ごとに集計した.同様にマイクロ人口統計もクロス集計し,国勢調査の居住者数を比較することで信頼性の検証を実施した.本稿では都市地域,近郊住宅地,農村地域を含む2010年の千葉県柏市全域(125町字)を対象とした.
居住者の年代と世帯類型をクロスして比較した結果,それぞれの類型を構成する居住者数と比較してもRMSEが十分に小さく,マイクロ人口統計から得られる居住者の情報が国勢調査と類似した結果となることが明らかになった.また年代,世帯類型に加えて性別もクロスした場合でも,多くの組み合わせにおいて類似する結果が得られることが明らかになった.更に居住者単位で見ていくと若干の不一致がランダムに発生するため,マイクロ人口統計は個人情報の該当性についても上手く回避出来ていると言える.今後は他の市区町村でも同様の検証を進めていく予定である.

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