日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 817
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発表要旨
群馬県鹿沢地域におけるスキー公式行事の役割
*名倉 一希
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抄録

日本のスキー観光は高度経済成長に伴って成長し,1993年に最盛期を迎えた.しかし,その後は急激に衰退し2010年のスキー場索道輸送人員は最盛期の半分以下にまで落ち込んだ.その結果,スキー場とその周辺観光施設を含めたスキーリゾートはスキー観光の衰退によって経済的に厳しい状況に置かれている.  呉羽(2014)では,小規模スキー場ほど経営の存続において不利であると指摘しており,中・小規模スキー場における存続事例とその詳細な研究の蓄積が期待されている.小規模なツーリズムの持続性においては大橋(2009)によってリピーターの重要性が示されており,スキー観光におけるリピーターはファミリー層や定年退職後のシニア層などについて注目されてきた.しかし,それらは一般的なレジャースキーを楽しむ客層であり,競技・技術指向のスキーヤーに着目する必要がある.  そこで本研究は群馬県鹿沢地域を対象に,競技・技術指向のスキーヤーが参加する公式行事の役割を明らかにすることで,スキー観光衰退期における存続要因の一例を考察することを目的とする.
スキー観光衰退下では自然災害や経済状況,気候変動により入込客数が変化しやすいが,群馬県鹿沢地域では公式行事の開催は集客の強制性から安定した入込客数を確保できることが明らかになった.また,それによりリピーターを創出する役割も認められ,これらがスキーリゾートの存続に寄与している.

文献
大橋めぐみ 2002.日本の条件不利地域におけるルーラルツーリズムの可能性と限界-長野県栄村秋山郷を事例として-.地理学評論75(3)A:139-153.  
呉羽正昭 2014.日本におけるスキー場閉鎖・休業にみられる地域的傾向.スキー研究11(1):27-42. 

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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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