日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 907
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発表要旨
東日本大震災被災県における死亡率の変化傾向
*北島 晴美
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抄録

1.はじめに
2011年3月の東日本大震災とその後の原発事故は,特に東北地方の福島県,宮城県,岩手県に甚大な被害をもたらした。これらの被災県における死亡率の動向について報告する。
高齢化に伴い死亡数は増加し,死亡率も上昇するため,人口構成の影響を低減して死亡率の地域差を把握するために,年齢階級別死亡率を算出し,各都道府県の状況を比較した。
都道府県別・性別・年齢別日本人人口データが公表される国勢調査年(2010年,2015年)における死亡率を算出し,2時点間の変化を分析した。主要死因(悪性新生物,心疾患,肺炎,脳血管疾患,老衰)の死亡率についても調査した。

2.研究方法
使用した死亡数データは,人口動態統計(確定数)(厚生労働省)である。全死亡のほか,死亡数が多い75~84歳85~94歳,さらに,95歳以上の3年齢階級毎の2010年,2015年死亡率,月別死亡率も算出した。北島・太田(2011)と同様に,各月死亡率は,1日当り,人口10万人対として算出した。人口は国勢調査(総務省)の日本人人口を使用した。

3.都道府県別死亡率の変化
(1) 死亡率(全死亡)
被災3県の都道府県別死亡率(全死亡)の順位(死亡率高値が1位)は, 2010年から2015年にかけて,岩手県7位→10位,宮城県35位→37位,福島県14位→13位であり,大きな変動はないが,岩手県,宮城県は,死亡率が低い方向へ順位を移動した。

(2) 75~84歳年齢階級死亡率
2010年から2015年にかけて,75~84歳死亡率は全都道府県で低下した(図1)。被災3県の内,福島県は他の2県とはやや異なり,全国平均よりも低下率が小さい。

(3) 85~94歳年齢階級死亡率
2010年から2015年にかけて,85~94歳死亡率が低下した県が多いが,上昇した県もある(図2)。宮城県の死亡率は低下し,福島県の死亡率は上昇した。

 (4) 95歳以上年齢階級死亡率
2010年から2015年にかけて,95歳以上死亡率は上昇する県と低下する県が併存する。人口,死亡数とも上記の2年齢階級よりも減少するため死亡率の変動が大きくなる。3県の動向は85~94歳年齢階級と類似しており,福島県の死亡率は上昇した。

 主要死因別死亡率の変化傾向,月別死亡率の変化傾向については,発表時に報告する。

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