抄録
近年、小型無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle、通称;ドローン)は急速な技術革新により安価で安定した飛行が可能となり、研究者のみならず一般市民も入手できるようになった。これまで植生調査や災害時の被害状況調査等では航空写真や衛星画像が用いられてきたが、ドローンはそれらに比べ低空で撮影することから解像度が非常に高く、頻繁に撮影を行うことができる。しかしながら、湖沼や河川に生育する水生植物を対象にした国内事例は未だ少ない。そこで、発表者が現在行っている霞ヶ浦でのドローンを用いた水生植物モニタリングの実施事例を紹介する。 霞ヶ浦は関東平野で最も水域面積が広く、浮葉植物のアサザ(Nymphoides peltata)の保全・再生活動が行われている。2015年に霞ヶ浦全域の保全・再生が行われた地点を対象に、アサザ群落の繁茂状況の調査を行った。植栽事業は右岸の鳩崎、古渡、中岸の石田、根田、左岸の永山の計5地点で行われた。これら植栽地のうち2015年にアサザを確認できたのは根田と永山の2地点のみで、残りの13地点の大部分は自然に進入したと判断された。2015年に繁茂が確認されたのは舟溜りや消波堤の内側など、波や風の影響を受けない地点に集中していた。本研究では植栽地である根田と、自然にアサザが侵入した麻生漁港の2地点を対象に群落モニタリングを行い、消波堤の有無がアサザ群落に与える影響について評価することを目的とした。