日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 914
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発表要旨
「南方森林資源」開発と日本林業
帝国林業の継承
*中島 弘二
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抄録
戦後日本の木材輸入は外材輸入が自由化された1964年以降急増し、とりわけ合板産業はその原材料の殆どを南洋材に依存していたため、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどの東南アジア諸国からの原木輸入が急増した。本発表は、このような戦後の東南アジアにおける日本による森林資源開発を、アジア太平洋戦争期に構想された「帝国林業」との連続性において理解することを試みる。林業文献や史資料から戦前戦後の日本による東南アジアの林業開発の実態を明らかにするとともに、当時の林業関係者の言説から南洋材への認識を明らかにした。その結果、戦後の日本林業による南洋材へのまなざしの構図は、疲弊した日本国内の森林資源を回復させるための「代替資源」として南洋材を位置付け、開発する必要性を唱えるものであったことが明らかとなった。こうした南洋材へのまなざしは総力戦下で計画され、敗戦により頓挫した「帝国林業」のまなざしを受け継ぎ、それを実現させたものであると考えられる。
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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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