抄録
本研究は,愛知県東加茂郡賀茂村(現豊田市足助地区の一部)の,大正年間の『居所寄留届綴』の分析から,当時の山村地域からの労働力移動の実態に関する知見を見出すことを目的としている.
明治・大正期の人口動態に関する研究は、統計資料の不正確性・不完全性ゆえに未だに多くの検討の余地を残しており、とりわけ人口移動の活発化に伴う都市化の進展の実態解明は大きな課題である。本研究はこうした課題に接近するため、人口移動や都市化の実態解明につながる知見を見出すことを狙いとしている.また,移動の実態を人口排出地域の側から明らかにすることは,大正年間に始まったとされる人口転換プロセスの解明にも寄与できる可能性がある.
本研究においては,1915(大正4)年から1926(大正15)年の居所寄留届のこれらの情報をデータベース化し,寄留先や寄留者の属性,寄留の期間などを検討した.