日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 525
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発表要旨
北海道留萌における風速の急変動現象発生時の気圧場推移
*永野 良紀加藤 央之
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抄録
はじめに
近年,クリーンエネルギーとして風力発電が注目されており,北海道の日本海側では多くの風力発電所が立地している.しかし,風力発電を大量に導入すると風速が急激に変動することにより電力の安定供給に影響を及ぼす.そこで,風速が急激に変動するタイミングを予測することが非常に重要である.前回の発表では北海道北西部の日本海側に位置する留萌では,風速急増加後に西南西や北西の風向の風が吹きやすく,特に西南西風となるケースでは北海道の北側を低気圧が通過したことにより気圧場が変化したことを明らかにした(永野,加藤:2016).今回は風速急増加後に北西風となるケースに焦点を当て,解析した結果を報告する.
解析方法
 留萌の風速急増加については,留萌の風速データより1時間の変動値を求め,変動値の3.0σ(8.6m/s)を超えて風速が増加したときと定義した.次に,北海道気象官署22地点のSLP場(狭領域場)について,各時刻での全22地点の平均値からの偏差に直して主成分分析を行った.得られた主成分分析結果について地上天気図と比較し,主成分空間内において,風速急増加の発生する前後で気圧場がどのように変化していくのか解析を行った.
結果 
風速急増加後に風向が北西となるケースは29事例みられた.風速急増加が発生したときの狭領域場については,主成分空間Z1-Z2平面の第2象限に分布しているケースが19事例,第3象限に分布しているケースが9事例であった.このことは,55事例のうち1事例を除き,風速急増加後の風向が西南西となるケース(主として第3象限)と大きく異なる.ここで,第2象限と第3象限での風速急増加現象の気象学的な違いを明らかにした.
第2象限のパターンは北海道の日本海側で気圧が高く,太平洋側で気圧が低くなるという空間構造を持ち,地上天気図から西高東低の冬型気圧配置型と確認できた.また,第3象限のパターンは南南東から西南西にかけ気圧が高く,北海道の北側を低気圧が通過するパターンであった.2000年11月18日の事例では風速急増加が発生する前後に気圧場は第2象限に位置している.そして,気圧場はZ1-Z2空間上を左進し,Z1スコアが-10.0を下回ったときに風速の急増加が発生している.この事例の地上天気図は西高東低の冬型気圧配置となっており,永野・加藤(2016)で定義された総観気象場についても西高東低の冬型気圧配置を示すType-Wであった.一方で,2003年1月5日の事例では風速の急増加が発生する前後で気圧場は第3象限にプロットされている.そして,気圧場は第3象限を左進しZ1スコアが-12.0を超えたときに風速急増加が発生している.この事例の地上天気図を確認すると,北海道のオホーツク海側に発達した低気圧が存在している.この事例は風速急増加後の風向が西南西となるケースと近い気圧配置パターンであるが,西南西のときは低気圧付近の等圧線の走向が東西であるのに対し,本事例では等圧線の走向が南北になっているため風速急増加後の風向は異なっている.
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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