日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P211
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発表要旨
関東地方における花粉濃度の空間分布特性
*阿部 聖史
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抄録

平成28年度に東京都が行った,花粉症患者実態調査によると,都内におけるスギ花粉有病率は48.8%と推定され,近年,増加傾向にある.スギ花粉量の日変動と気象条件の関係性についての研究(稲村ほか,2010)や,シミュレーションを用いた花粉分布予測の研究(川島,2002)が行われているが,ある特定の範囲で花粉の空間分布パターンを分類し,解析している研究は少ない.そこで,本研究では,統計的手法を用いて,関東地方の花粉濃度の空間分布をパターン分類し,分類されたグループごとの気象対応特性を明らかにする.
まず,NTTドコモから提供していただいた,環境センサーネットワークの花粉時別データのうち,花粉濃度の低い事例を除いた,解析対象事例に対して,データを対数に変換し,主成分分析を行った.次に,第1~6主成分の主成分スコアを用いた,6次元空間でクラスター分析を行い,分布パターンをグループ分類した.さらに,グループごとに,メソ数値予報モデルGPVの地上風のデータを用いて,風の流跡線図を作成し,事例解析を加えて,各グループの特性を明らかにした.本研究における解析対象期間は,2012~2013年の2~5月である.
主成分分析の結果,第1主成分は平均分布に近いパターンで全体的な変動,第2主成分は北西-南東方向の変動,第3主成分は南部とその他地域との相対変動で,寄与率はそれぞれ40%,7.5%,4.5%であった.第4主成分以下は時間,空間的な局地変動バターンと考えられ,寄与率も小さかった.第6主成分までの累積寄与率は,59%である.
クラスター分析の結果,花粉濃度が相対的に小さい順に,A ~Dの4個に分類できた.時別頻度に注目すると, 9~18時の日中に,相対的に濃度が大きくなることが分かった(図1).相対的に花粉濃度が大きく,事例数が多いB,C をそれぞれ7個,5個に分類し,合計で14個に分類した.太平洋側と南部で濃度が相対的に大きくなるグループC5について,千葉を始点とした流跡線を解析してみると,北西と南西の2成分の流跡線が多くみられる(図2).それぞれの成分について,他のグループとの前後関係を用いて比較したところ,北西,南西成分ともに,C5に継続性があることから,主に茨城県,千葉県の花粉源の影響があると考えられる.また,北西成分においては,他のグループからC5に移るパターンも存在していたため,北~西部の花粉源の影響も合わせて考えられる.このことは,実際の花粉濃度推移図やC5の前後数時間の花粉濃度平均図からも確認できた.

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