日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P305
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発表要旨
地理的加重2次元回帰による高田城下町絵図の分析
*矢部 直人
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抄録
近年ではGISを歴史研究に応用する,歴史GISという分野が活気を呈している(HGIS研究協議会編2012,平井ほか編2014)。この分野の中では,古地図と現代の地図を重ね合わせて,古地図の歪みを分析する研究がある(小嶋・玉川2004,塚本・磯田2007, Symington et al. 2002など)。そこでは,地図を重ねる方法としてユークリッド2次元回帰分析や,アフィン変換といった,2次元回帰分析手法(Tobler 1994, Nakaya 1997)が用いられてきた。矢部(2014)も,江戸時代に作製された高田城下町絵図を,アフィン変換によって現代の地図に重ね合わせることを試みた。

これらの研究では,古地図を現代の地図に重ね合わせた後の残差に,空間的な自己相関がみられる(図1)。残差に残る空間的自己相関,つまり古地図の局所的歪みを解釈・考察することが,これらの研究の関心であるといってもよい。しかしながら,残差に空間的自己相関が残るのであれば,2次元回帰分析の手法自体を,空間的自己相関を前提とした手法へ改良することも考えられよう。

残差に残る空間的自己相関への対応としては,変数間の関係が対象地域内で変動しているとする,地理的加重回帰分析(GWR)の手法がある(Fotheringham et al. 2002)。そこで本研究では,地理的加重回帰分析を2次元回帰分析へと拡張した,地理的加重2次元回帰分析(GWBR)を新たに提案する。

地理的加重2次元回帰分析を,江戸時代の高田城下町絵図に適用した結果,残差に有意な空間的自己相関はみられなくなった。また,江戸時代の城下町絵図にみられる,局所的な拡大・縮小や回転,シアーなどの歪みを,回帰分析のパラメータとして個別に記述することが可能になった。これまでは,残差として一括されてきた局所的歪みの内訳を,個別に議論できるようになったことが,新手法の成果として考えられる。
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