抄録
本研究の目的は,ドイツの日系企業集積をめぐる経済的プレゼンスの問題を研究したものである.特に,進出先であるホスト社会とのしなやかな関係構築と当該ホスト社会における他国企業の動きに適応させていく論点の一端を,ドイツでの事例から明らかにする.研究の背景には,近年の日系企業の海外進出に関する研究,日系企業集積研究において,プレゼンスへの懸念が示されるようになってきていることがあげられる.こうしたプレゼンスの問題をめぐり,「再領域化された日本」や「同質」な集積という視点を克服することが求められる.研究の結果,グローカル・コミュニティとして進化している在独日系企業集積のプレゼンスは,懸念はあるものの行研究で指摘されているほどの弱さなく,ホスト社会における新たな環境変化への適応を試みるレジリエントさが備わっていることが理解された.