日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 831
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発表要旨
カナダ・ブリティッシュコロンビア州における農村空間の商品化による都市-農村共生システム
*田林 明菊地 俊夫
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抄録

研究の課題 先進国の農村空間では生産機能が相対的に弱まり、消費機能が強まっている。そして様々な農村資源を消費者に提供することを、農村空間の商品化と捉えることができる。発表者らは、2014年以降カナダのブリティッシュコロンビア州において、農村空間の商品化がいかなる形態で、どのように進み、それによっていかに農業・農村が維持されているかをフィールドワークによって明らかにしようとしてきた。この報告は、農村資源の主要な消費者である都市住民にとって、農村空間の商品化はどのような意味を持っているのかを、地域差に着目しながら検討する。
農村空間の商品化の地域差 ここでは連続した市街地を除く地理空間を農村空間とすることから、ブリティッシュコロンビア州には場所によって多様な農村空間の商品化と都市住民の消費活動がみられる。まず、(1)バンクーバー大都市圏の都市農業は、都市住民にとって日常的な緑地空間や余暇空間、アメニティ空間の創出という役割を担っている。(2)ローワー・フレーザーバレーは、大都市への農産物の供給地というだけではなく、都市住民が週末などに日帰りで農場を訪ね、農産物を生産者から直接入手し、農村の友好的な雰囲気にふれることができる地域である。(3)オカナガン地域の農村空間の商品化はワインツーリズムによって象徴され、観光シーズンにはカナダ各地からも多くの人々が訪れる。(4)内陸のトンプソン・カリブー地域は、かつては粗放的な大規模牧畜地域であったが、オーガニックの牛乳生産に専門化したり、醸造用のブドウを栽培しワインを醸造したり、大規模な野菜栽培に転換することによって、ブランドをつくり独自の販路を開拓するようになった。農地の周辺の丘陵地や湖に面した場所では別荘地が多く、主としてバンクーバー大都市圏の住民が利用している。(5)バンクーバー島南部は、ローカルな産物に基づくスローライフによって特徴づけられ、退職者が老後を過ごす場所として、カナダ全体から高く評価されている。(6)南東部のクートニー地域では、地元消費を念頭においた小規模で集約的な有機農業が盛んである。(7)北東部のピースリバー地域は、世界市場向けの穀物と肉牛の生産地であるが、アラスカハイウエーのゲートウエーとして、世界ジオパークなどの存在から、カナダのみならずアメリカ合衆国からの観光客を引きつけている。(8)さらに国立公園や州立公園が多い山岳地域には、世界中から多くの観光客が訪れる。
農村空間の商品化による都市-農村共生システム ブリティッシュコロンビア州では、人口分布や農業、土地資源など地域の条件を反映して、農村空間の商品化が多様である。その多様性は、時間的には消費者の日常的なものから、週末、年次休暇、退職後といった違い、空間的には地元、バンクーバー大都市圏、カナダやアメリカ合衆国、そして世界からの消費者といった違いを反映しており、全体として地域の産業や社会を維持するために重要な役割を果たしている。

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