抄録
本研究では礫層の堆積環境と古地形を復元して、現地形と比較することで、大磯丘陵東部の構造運動を解明することを目的としており、そのためにまず金目川現河床礫と相模湾現海浜礫を検討した。また、この地域に広く分布する最終間氷期を主堆積時期とする吉沢層(町田・森山, 1968)を中心に更新統の構成礫を採取し、堆積環境の復元を試みた。
現河床礫は金目川の上流部から下流部にかけて5 地点、現海浜礫は金目川(花水川)河口付近から西へ4 地点で、1m×1m の枠を設け、100 個の礫を採取した。地層中の礫は、高麗山-浅間山山地内の湘南平南部の標高約108 m地点の0.5m×2m の露頭から100 個の礫を採取したほか、他の位置からも同様の手法で採取した。採取試料は礫径(長・中間・短径)、礫種、円磨度、風化度、球形度の計測・測定、および、運搬堆積過程を推定するために形態分類(Sneed・Folk,1958)を行った。
金目川現河床礫の平均礫径は下流へ8cm 程度から3cm 程度に減少し、円磨度は0.3 から0.6 へ増大した。平均球形度は 0.7 付近で概ね一定していた。構成礫種は、上流では火砕岩類が多数を占め、下流では砂岩・泥岩・礫岩の割合が増加した。これは金目川下流の東を流れる相模川が、周辺に発達する砂州・砂丘を形成する過程で金目川の支流として流れ込んでいた可能性が挙げられる。相模湾沿いの現海浜礫は、平均礫径は金目川河口付近で2.5cm 程度、他地点では4cm 程度であった。円磨度は0.7 程度、平均球形度は約0.6 で、大磯丘陵東部の西側のみ0.7 を示した。礫種は砂岩と泥岩が卓越し、金目川河口から西に向かって泥岩の割合が増加していた。海浜礫の給源河川が大磯丘陵東部の東側と西側で異なる可能性が挙げられる。また、形態分類より現河床礫と現海浜礫の分布が概ね2 つのクラスターに分かれた。湘南平南部で採取した礫は、砂岩と泥岩が卓越し、平均礫径は金目川河口付近の海浜礫と同程度ゆえ、海成層の可能性が高い。しかし、平均球形度と形態分類は金目川中流部の礫に近く、陸成層である可能性も完全には否定できない。発表では他の更新統から採取した礫分析の結果も踏まえ、当該地域の古地形について報告する。